2023年04月24日

4月24日の記事

富士山・座神香聞   4/24

クニオ
“スゲー富士だったね!”
ヨシコ
“どの富士山のこと? 今日は沢山の富士山を観たからお腹一杯、どの絵にも感動したけど”
クニオ
“「霽るる」(*1)だよ、観た瞬間、頭をガツンと揺さぶられちゃた”

春の一日、東京・山種美術館に「富士と桜」展を鑑賞に出かける。
副題に「北斎の富士から土牛の桜まで」とある。
北斎や広重、横山大観、奥村土牛等々の神々しい富士。
渡辺省亭、上村松園、速水御水、千住博等々の絢爛たる桜の競演。

ヨシコ-16
“「霽るる」ね ……  えーと …… なんか異質な感覚を覚えた富士山のことかな~ ”
クニオ
“それそれ  異質というよりは異様な感覚ね!”



不尽山を詠みし歌一首
「言ひも得ず 名づけも知らず 霊しくも います神かも」 (*2)
萬葉集3巻319 高橋連虫麻呂

富士はその神々しい美しい姿によって、万葉人やそれ以前の古代人の自然信仰のより所となっていた、万葉集からもわかる、そう霊峰富士である。


クニオ
“展示されているほとんどの富士は、神々しく美しい姿だったよね、そうだなー……和魂と言っていいと思う、でも「霽るる」は荒々しく、富士はまるで荒魂のように思えたんだ”
ヨシコ
“荒魂って、神の霊魂が持つ2つの側面(*3)、和魂と荒魂のこと?”
クニオ
“そう、「霽るる」から強烈なエネルギーを感じない? ほとばしる生命力、まさに荒魂の富士を”
ヨシコ
“確かに、ほかの富士は、麗しく、輝くエネルギーを身にまとった富士だけど、これは、今まさに海から生れ出て、浮かび漂っている、荒々しいエネルギー溢れる富士って感じね”
クニオ
“でしょう   (●´ω`●)ウンウン♪”
…………

しばらく「霽るる」の前で佇む二人

…………

こうして二人は、麗しくも荒々しい相貌を持ち「あっぱれ」と呼ぶにふさわしい「富士」に名残を惜しみながら、「あわれ」を誘う「桜」のもとに向かった。

*1)《霽(ふ)るる》  川﨑晴彦 日本画家(1929-2018) 山種美術館蔵
作品紹介 雲をまとい、波立水面の上にそそり立つ富士、威厳ある佇まいを見せる 

*2)  ……言不ㇾ得 名不ㇾ知 霊母 座神香聞……
「言ひも得ず 名づけも知らず 霊(くす)しくも います神かも」
訳:名づけようも言いようもなく霊妙な神様だ 
霊しく(くすしく)  霊妙不可思議の意

富士は、当時火山活動は活発で、煙の絶えざる様を不尽と表記していた、富士は平安時代以降とされる。        出典 萬葉集 新日本古典文学大系1 岩波書店

*3)荒魂(アラミタマ)と和魂(ニギミタマ)
荒魂は神の荒々しい側面、荒ぶる魂である。勇猛果断、義侠強忍等に関する妙用とされる一方、崇神天皇の御代には大物主神の荒魂が災いを引き起こし、疫病によって多数の死者を出している。
和魂は神の優しく平和的な側面であり、仁愛、謙遜等の妙用とされている。
                           出典:ウイキペディア

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2023年04月08日

「渡辺崋山と松風老人」

「渡辺崋山と松風老人」   4/7

無言で「冨峰驟雨図(ふほうしゅううず)」(*1)を見入る二人。
ヨシコはいたく感動したようだ、「冨峰驟雨図」の少々物悲しく寂しい風情が侘びなる美的な感情を発露させたのかもしれない。
 
 落款に「冨峰驟雨図 画為松風老人 時天保甲午龍潜月 崋山外史登」とあり、松風老人なる者の依頼で描いたと読み取れる。




 ヨシコ
“松風老人って誰?
クニオ
“no idea  ”

シャカシャカ ふむふむ 
 
クニオ
“大庭松風(*2)、遠州第一の好事家とあるぞ!“
ヨシコ
“松風の依頼で描くってことは、崋山と縁(えにし)があるってことよね”
クニオ
“これは探ってみる価値がありそうだね”

ヨシコ
“崋山は山水画を否定していたようね、だから山水画の遺作は非常に少ないと言われているらしいよ、だとしたら、なぜ松風老人の依頼に山水画を描いたのだろう?”
クニオ
“だよね”

実際、崋山にとって山水画は観念的という考え方があり、そのような観念的なものを好む人物をも嫌っていた(*3)


しばし休憩し考え込む二人 …… 時は春 (ρД-)ねむーい …… 心地よい春陽が二人を夢路に誘う


クニオ
“やはり鍵は松風老人だと思うんだな…………崋山は、真面目で責任感があり勤勉、だから家老として推挙された“
ヨシコ
“谷文晁(絵の師)も、松崎慊堂(儒学の師)も同じ性向の人だった、でも松風老人は違った!”
クニオ
“松風老人は好事家にして遊び心のある人、すこぶる数奇な人だった”
ヨシコ
“絵に専念したかった崋山、しかし周りの状況が許さず、意に反して家老となる“
クニオ
“真面目ゆえに家老職における激務で、崋山の心は乾ききっていた!“
ヨシコ
“大庭邸に立ち寄り、親しく松風老人と言葉を交わす中で、乾いた気持ちに変化が起こった”
クニオ
“崋山は松風老人により、乾いた心を癒された“
ヨシコ
“なーるほど 秋風老人オアシス説ね“
クニオ
“癒された崋山は、頑なさがほぐれ観念的と嫌っていた山水画を描いたんじゃないかな”

春陽の夢路にまどろむ二人……松風老人と崋山の姿は何処!……すやすや、グーグー

(*1)冨峰驟雨図(ふほうしゅううず)
富士山の山頂に雪が積もり山腹より山麓にかけて雲海が樹木や家並を覆って激しく雨を降らせている、この情景を崋山は墨一色で濃淡をつけて描きあげ、遠近感を出している
出典 渡辺崋山全集(第一巻本画編) 作品解説より抜粋  郷土出版社

「冨峰驟雨図 画為松風老人 時天保甲午龍潜月 崋山外史登」
天保五年(1834年)松風老人のために描いたとある。
明治期に商家の山﨑家が所蔵し、菅沼貞三氏により紹介される。
出典「東海道の旅・駿河への旅」 作品解説より抜粋

(*2)大庭松風
東海道掛川宿の富豪大庭家の九代目大庭松風(明和4年から弘化3年)、松風は書画愛好の風流人、東海道をいく雅人で掛川を過ぎる時、大庭家に立ち寄らない者はなかったという、谷文晁もしばし逗留した、滝沢馬琴はその著書「羈旅漫録」の中で遠州第一の好事家と述べている。
松風はその書画蒐集においても有数のコレクターと言われている、絵は黒梅図を得意としていた。
   出典 UAG 美術家研究所 遠州第一の好事家 大庭松風 
               
(*3)崋山の山水画に対しる考え方は、弟子の椿椿山にあてた手紙「絵事御返事」の中の「山水空疎」という言葉がよく知られている。 
出典 渡辺崋山全集(第一巻本画編) 崋山の山水画論 日比野秀雄 郷土出版社

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Posted by pasarela at 21:18Comments(0)●徒然に思う

2023年03月22日

訪れ・おとずれ・音連れ

訪れ・おとずれ・音連れ  2023 3/21


さくらの開花予想が始まった、TVではすでに、上野公園の四年ぶりの花下遊楽の光景を伝えている。

クニオ
“春の訪れが聞こえてくるね!”
ヨシコ
“聞こえてくる?   ”

音から、何かが訪れる時は必ず音を伴うと言われている。

松岡正剛氏(*1)によると、昔、日本ではカミ(神)の到来やカミ(神)の気配を「おとずれ」と呼んだそうだ。
「おとずれ」は「音連れ」でもある、かすかだから、感じるか感じないかの微妙な気配であったそうな。
 カミ(神)だけでなく、人の訪問も足音、衣擦れなどの音を伴う。

ヨシコ
“ハーンそうなんだ  なるほどね、ジャー 近年の春の訪れはどんな音を伴ってやってくるのかな?”

“はっくしょん“

ヨシコ
“はっくしょん? くしゃみですか”
クニオ
“近年の春は、花粉とくしゃみを伴うね”
ヨシコ
“いやいや、なんとも品のないというか、かすかでもなく微妙でもなく うーん 春が泣いてるってか”
クニオ
“僕も泣いてます グスン!  (´•̥ ω •̥` )“




クニオ
“実は静岡市美術館で開催された「東海の美 駿河の旅」展(*2)に二人で足を運びましたね”
ヨシコ
“運びましたね そこで作者のスピリットをビビット感じる絵に出遇いました”
クニオ
“ほほー、かすかな音連れをキャッチしましたか!”
ヨシコ
“しました!”

 その音連れの作者は渡辺崋山(*3)である、崋山と掛川との浅からぬ関係を知ることとなった音連れの話題は次回に!
「渡辺崋山と松風老人」 ……を乞うご期待ください (ᅙゝᅙ)γー~

*1)花鳥風月の科学 松岡正剛 中公文庫
*2)「東海の美 駿河の旅」展  静岡市美術館 2/11~3/26
*3)渡辺 崋山(わたなべ かざん)
江戸時代後期の武士・画家(三河国田原藩士・家老)、17歳で谷文晁の門に入る、崋山の写実的な表現や遠近法は西洋画研究の成果であった、傑作鷹見泉石像では顔にも衣服にもうっすらではあるが陰影法が施され西洋画風の跡が見いだされる。
号の崋山ははじめ華山で、35歳ころ改めた。別号は全楽堂・寓画堂など。1839年に幕府によって罰せられた(蛮社の獄)
出典 日本美術全史 田中英道 講談社学術文庫

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Posted by pasarela at 17:38Comments(0)●徒然に思う

2023年01月11日

1月11日の記事

智積院名宝・長谷川派   2023 1/11

新しい年が始まりました、新しい年を迎えることが出来る喜びに感謝!

クニオ
“「去年今年貫く棒の如きもの」  高浜虚子” 
ヨシコ
“ほんとうに、去年から今年、一瞬でしたね!”
クニオ
”僕は、その一瞬、寝てました“
ヨシコ
“去年今年に立ち会えないなんて、残念な人ね”
クニオ
“ (ノД`)ハァ ”
        
さて、二人には昨年、積み残した話題があります、京都・智積院の名宝展(サントリー美術館)」です、今日は、この話題に関した二人の話に耳を傾けてみることにします。 


クニオ
“ところで、人生の一瞬、一瞬に野望を胸に出世のチャンスをうかがって、絵の腕を磨いた室町時代の絵師と言えば”
ヨシコ
“長谷川等伯ね!”
クニオ
“That’s right”

クニオ
“思うに、等伯は絵画に対する並外れた技量の持ち主であるとともに、これまた、並外れた野心家でもあったようだね”
ヨシコ
“でしょうね、だって、祥雲寺(玄智積院)の障壁画という大仕事を獲得するために、狩野派の横っ面をひっぱたいたんだから”

    等伯がこの仕事を取れたのも商雲寺の造営奉行の前田玄以(後の五奉行の一人)の引き立てであると言われている。「ライバル美術史 室伏哲郎 創元社」

クニオ
“千利休の影がチラチラするね“
ヨシコ
“そうよね、利休の美意識からしたら、大ぶりで絢爛豪華な狩野派は好みでなかったんじゃない!“

クニオ
“等伯も世に出るチャンスを虎視眈々と狙っていた  だから  狩野派の豪放な金箔障壁画の手法を、必死に学び取ることもいとわなかった”
ヨシコ
“その学ぶ姿勢は貪欲ね、たとえ鼻につくライバルの画法であっても!”
クニオ
“等伯の素晴らしいところは、学び取った上に、さらに一工夫を加え、等伯流を編み出した点だね”
ヨシコ
“一工夫って?”
クニオ
“写実性!  そこに、観る人に狩野派にはない、抒情的性を抱かせるらしいよ”

そうこうするうちに二人は「 桃山絵画の精華 」… 等伯と久蔵(息子)の障壁画作品展示室に
・「楓図」「松に秋草図」「松に黄蜀葵図」 … 長谷川等伯
・「桜図」 … 長谷川久蔵




ヨシコ
“そうすると「楓図」は金箔障壁画でありながら、抒情的性を抱かせる作品になるわけね?”
クニオ
“そう!  永徳の鍵『「檜図」と比べて観ると良いよ鍵』言われたから「檜図」の写しを用意してきたんだ”
ヨシコ
“ちょっと見せて   うーん そういわれると確かに檜図に比べると  自然な感じかな!”
“草花の違いは分かり易いね   ほらほら ここ!ここ!  写実的だよね”

こうして二人は細部にこだわり、作品が醸し出す生命感や抒情性に触れることを怠り、深い感動を得ることなく展示室を後にするのであった   残念!


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2022年11月04日

「気候風土型」という住まい その九 大きな窓 多層窓の構成 

「気候風土型」という住まい その九
大きな窓 多層窓の構成  11/4



朗読するクニオ
……家の作りやうは、夏をむねとすべし、冬はいかなる所にも住まる…………遣戸は蔀の間より明るし……

ヨシコ
“あらー 誰もがそこしか知らない、誰もがそこだけ知っている  「徒然草」の一節だわね!……”
ヨシコ
“よく思うんだけど、これってもはや古文イントロクイズって感覚じゃない? 例えば「祇園精舎の鐘…」や「女もすなる日記…」など”
クニオ
“などなどと言われても ……” 

ヨシコ
“じゃー古文イントロクイズいくわよ 「行春や鳥啼き魚の目は」ってのは?”
クニオ
“あのね そういう事じゃなくて、……遣戸は蔀の間より明るし…… に注目してほしいのよ”

……今日の話題は大きな窓・多層窓の構成。
だからプロローグで、すでに引き戸が鎌倉時代には普及していたことをアピールしたのだが、ヨシコのガブリ寄りにどうも調子が狂うクニオ。

ヨシコ
“はい注目! …… 遣戸って、確か板戸の引き違い戸でしたっけ?  いつ頃登場したのかな”
クニオ
“そ そうですね、鎌倉時代かな……”
ヨシコ
“それじゃー 私が愛用している明かり障子の始まりはいつ頃?”
クニオ
“ええーと   (-_-;ウーン   
 えーと、室町時代かな、半紙張りの障子の初見は、銀閣寺の東求堂と言われていますね、それも板戸から改良を重ねながらではなくて、突然ってことらしいんだ“
ヨシコ
“ へ― 突然ね!  東求堂って茶室の原型といわれているアレね”
クニオ
“はいそうです、で、それまでの建物の開口部の装置は、蔀戸(上下に回転する)か開き戸でした、だけど、どちらも開けるか閉めるか、だから、茶を楽しむには具合が悪い”
ヨシコ
“確かに半開きって始末が悪いわね! …… ということは茶を楽しむために茶人が開発したのかしら?”

……そこはわかりませんが、障子から漏れる薄明りに浮かぶ茶道具のシルエット 確かに、陰影礼賛の美意識を際立てる装置と言える。

クニオ
“そこに登場した遣戸や障子などの引き戸は、戸締りは不完全だけど、開閉の調整が自在で楽にできる、ってことは光や風の微調整ができるから、広く受け入れられたと思うよ”
ヨシコ“
“明かり障子の登場は一大革命だったわね!”
クニオ
“蒸し暑い日本の住まいにとっては必須のアイテムと云えませんか?”
ヨシコ
“確かに、引き戸・障子は、気候風土に適応しながら続いてきた伝統的な住まいのアイテムですね!”

……ヨシコのガブリ寄りも、土俵際で何とか寄り切られずに予定調和で終わりました、めでたし、めでたし。






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2022年10月31日

掛川産材を地場産業にする その2  

掛川産材を地場産業にする その2  


……前回は、気候変動に対する危機感等から、建築界でも木の利活用が大幅に進められつつあります、一方、木材産地にとっては大津波となる可能性があることを指摘しました。

さて今回は、その大津波に襲われても水没しないための取り組み(掛川産材を地場産業にする)について話が進みます。



ヨシコ
“津波で沈没しないためにはどうしたらいいと考えているの!”
クニオ
“鍵は報徳訓の「衣食住」にあると思うんだ”
ヨシコ
“身命の長養は衣食住の三つに在り 衣食住の三つは田畑山林に在り(-1) の衣食住のこと?”
クニオ
“そうです、この報徳訓は、暮らしの安全保障上、衣食住は必須の要素ですよね、だから衣食住は地元の人材と資源で完結させなければならないということだと思います”
ヨシコ
“えー そりゃー初耳だわ! …… でも、衣食住は暮らしの安全保障上不可欠だから、地場産業にするしかないってことはよくわかります! ”
クニオ
“住に深くかかわる建築も衣食住の住に含まれると!”
ヨシコ
“そっか!大津波によって衣食住の一角が、蟻の一穴のごとく崩れてしまっては一大事ってことね”


……話は白熱して  CLTや大断面集成材という大津波で水没しない処方箋はなにかという話題に移っていきます。   

クニオ
“処方箋はやはり、地域の掛川にすでに存在する建設インフラや人材の活用だと思うんだ”
ヨシコ
“ええー でもう少し具体的にお願いします”
クニオ
“だから、住宅を建てるインフラね、製材所、プレカット、大工さんなどのインフラと人材ね、仕事に精通しているし技術もある、さらに地域の事情も心得ているし”
ヨシコ
“なるほど、それを使わない手はないわね!”
クニオ
“もちろん従来どうりとはいかない”
ヨシコ
“一工夫が欲しい?”
クニオ
“例えばサーキュラーエコノミー(*2)を見据えた地場産業化とか …… 事業者の意識改革が不可欠だと思うんだ”
ヨシコ
“サーキュラーエコノミーって最近話題のアレかな …… えーと …… 環境に配慮した持続可能性の高い経済のことね”
クニオ
“サーキュラーエコノミーの三原則(*3)の一つに「自然システムを再生する」っていう取り組みが含まれているよね”


……話題はサーキュラーエコノミーまで言及されました、一方サーキュラーエコノミ―に取り組むうえで重要な課題も見えてきます。   
 日本では、木材生産における歩留まりが低い、例えば、山の立木から原木(伐り出したままの状態:丸太)までの歩留まりは60%程度(立木の上部の梢や枝、根元の部分が切り捨てられるので)、原木から製材までの歩留まりは50%程度、ということは立木から換算すると歩留まり30%程度となってしまう。
逆に言えば、約70%は活用できていない、だからこの捨てられている部分の活用が川上・川中の経営改善の鍵を握るかもしれない。……話はさらに続きます。

  
 ヨシコ
“えー サーキュラーエコノミーの三原則に「廃棄物と汚染を生み出さないデザイン」って取り組みがありませんでしたっけ”
クニオ
“ウッジョブ!(WOODJOB)(*4)   いい指摘だね     
 実は、木材の生産における製材の歩留まりはかなり低いんですよ …… 約30%…… これは、山の経営を疲弊させている原因でもあるんだけど、一方、サーキュラーエコノミーの原則に反するよね“
ヨシコ
“なるほどね、原材料の70%も捨てたんでは儲からないわね!
 現状は理解しました  ……  さらに何かありそうね”
クニオ
“ご指摘ありがとう、実は、CLTパネルの素材となるラミネ(挽板)の原木からの歩留まりって、驚くことに15%程度って言われています”
ヨシコ
“えー じゃー立ち木からだと歩留まり10%を切るって話 …… そりゃー大津波だわ”
クニオ
“でしょー だからCLTという大津波が押し寄せる前に産地は何らかの手を打つ必要があると思って「掛川産材を地場産業にする」を叫ぶことにしました”
ヨシコ
“木材の資源循環と建築の地場産業化を図る …… か ”
クニオ
“本年度は講習会を通して、その必要性と「掛川市の現状と課題」を取り上げて議論し、思いを共有し、次につなげる組織づくりまで行きたいなっと思っています、ご支援よろしく”
ヨシコ
“ラジャー 応援しますね”


(*1)報徳訓
長生きをするには、衣食住のバランスをよくしなければならないし、衣食住を良くするためには、それら をつくってくれる田畑、山林を良く手入れしなければならない。

(*2) サーキュラーエコノミー(循環型経済}
これまで経済活動のなかで廃棄されていた製品や原材料などを「資源」と考え、リサイクル・再利用などで活用し、資源を循環させる、新しい経済システム。

(*3) サーキュラーエコノミーの三原則
1.廃棄物と汚染を生み出さないデザイン(設計)を行う
2.製品と原料を使い続ける
3.自然システムを再生する

(*4)ウッジョブ! (WOODJOB)神去なあなあ日常:林業の日常を描いた映画の題名  この場合、意味はGoodjob ということ人あります。

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2022年10月25日

気候風土型」という住まい その八 通風と吹き抜け・高窓  

気候風土型」という住まい その八
通風と吹き抜け・高窓  /

ヨシコ
“高窓って ……  私の家も吹き抜けと高窓があるから、気候風土適応住宅ってことかしら”

…… (゚A゚ ) 突然何を言い出すか、KY面目躍如たるヨシコさん。





クニオ
“「気候風土型適応住宅は、省エネ法の基準をクリアーすることは困難だけど、地域の気候風土に応じた住まいに特徴づけられる要素を備えていて、省エネ住宅では叶えられない暮らしが達成できている」ということだからね”
ヨシコ
“だから …… 高窓の効果だと思うけど、風が良く通るから …… エアコンもあまり使わないし!   ”
クニオ
”えーと それだけでは気候風土型適応住宅とは言えないんだよ「地域の気候風土に応じた住まいに特徴づけられる要素」を備えていて、環境負荷の少ない家ということだから“    
ヨシコ
“そうですか残念!   ”

……しばしの沈思黙考の後  良い質問をしてくれました  (´▽`)アリガト!

ヨシコ
“じゃーこの遠州地域に特徴付けられる要素ってなんだろ!”
クニオ
“1年を通じて日射量が多い、夏の海風、冬の北西風、温暖な気候と言われるわりには寒暖差(一日の)が大きいなどなど …… かな”
ヨシコ
“じゃー 夏の海風を誘い込んだり、採光を確保しやすい吹き抜けは、この地域に特徴づけられる要素よね?”
クニオ
“吹き抜けは「風」がある地域では、家の中に風を誘い込むうえでは効果的だから、この地域でも特徴づけられる要素だと思いますね”
ヨシコ
“だとすると、心理的な部分はどうでしょう? 吹き抜けは、解放感があって気持ちもよいわね、気持ちが良いといった心理的な効果も気候風土適応鋳型の対象要素になるんじゃない?”
クニオ
“確かに、暮らす上で、心理的、生理的に良い影響を及ぼすからね”
ヨシコ、
“でしょう!”
クニオ
“吹き抜けのある暮らしは、住まい方という点で特徴づけられる要素になりそうだね …… ”

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2022年10月23日

掛川産材を地場産業にする その1

掛川産材を地場産業にする その1







……どうしたんだろう、クニオはぶつぶつ言いながら考え込んでいる。
クニオの心の内に分け入ってみよう、耳を凝らすと …… 「日本各地の木の産地に大津波がやってくる!」とつぶやいているようだ


ヨシコ
“「大津波がやってくる!」 はー?  何のこと!”
クニオ
“ヨシコさん、まじに、木の産地に大津波がやってくる!と心配しているんだ、虚言でも僕が狂ったわけでもありませんよ”
ヨシコ
“別に謝らなくてもいいだけどね ううーン どういう事?”


……山地に津波なんて、あり得ないことですから、驚きますよね

クニオ
“あり得ない現象を表現した方がインパクトが強く耳目を集めるかなっと思ってね!”
ヨシコ
“まーそうですけど  でもどういう事?”


……話は地球の気候変動の話題から …… ちょっと耳を傾けてみましょう。

クニオ
“地球の気候変動に対する危機感から、CO2削減が喫緊の課題となっていることはご案内の通りですよね  例えばカーボンニュートラルね”
ヨシコ
“ええそうね、国連環境計画ではこの10年が勝負で、CO2の排出量をプラスマイナスで実質ゼロにしなければならないなんて言ってるわよ”
クニオ
“そうだよね、この喫緊の課題は建築においても例外ではなくて ……カーボンニュートラルを目標に掲げるならば木は最適の建築資材だよね……だから「木材」それも国内産材を大いに活用しようという波が、それも、どんどんと波は日増しに威力を増しているんだ!”
ヨシコ
“森林再生の取り組んでいるクニオさん達にとっては、願ったり叶ったりでは!”
クニオ
“もちろんそうなんだけどね  確かに、今まで木造として見向きもされなかった規模・用途の建築物(中大規模と呼ばれる非住宅建築物(*1))の木造化、木質化が進めば、国内産材の販路は拡大するんだけど”
ヨシコ
“何か浮かない顔をしてるはね!  喜ばしいんじゃないの?”
クニオ
“実は、建築物の木造化や木質化の推進はCO2だけでなく、今まで「木」の活用を妨げてきた火災に対する木造防耐火、耐震性の幅を広げる木質材料や工法が確立された結果であり、地道な研究の成果でもあるんですね”
ヨシコ
“地道にコツコツ!  それは素晴らしいわね、積小偉大の結実ね”
クニオ
“そうなんだけど、そこに大津波となる原因が潜んでいるんです”


……前置きが長くなりました、国産材の活用拡大が、なぜ「日本各地の木の産地に大津波がやってくる!」となるのか、  さて、クニオの心の内が徐々に明らかにされます。

クニオ
“えーと、中大規模の建築物の木造化を可能にしている木質材料、工法をCLTパネル、CLTパネル工法と呼んでいます”
ヨシコ
“CLTパネル? ようわからんけど、話進めてください”
クニオ
“CLTパネルって、中低質木材を大量活用する点は利点だけど、生産設備に多大な投資が必要なので掛川市域での生産が困難なんだ”
ヨシコ
“工場つくればいいじゃない、波がやってくるんだから”
クニオ
“えーと、多大な投資が必要な点を考慮すれば現実的でないよね、それにねCLT需要が増大すればするほど、パネルの素材となるラミネ(挽板)の仕入れが安く抑えられる可能性が高く、結果的に、山の木の価格も低くなってしまう”
ヨシコ
“商売の力関係からすると、完成品に近いところの方が価格決定権を握っているってことね”
クニオ
“そうなんだよ …… 結局、素材(木)生産は拡大しても、川上・川中の事業者は利益を上げることが困難となるじゃないかな、当然、山への富の還元は、今以上に難しくなると危惧しています”
ヨシコ
“それで「日本各地の木の産地に大津波がやってくる!」って危惧してるのね”
クニオ
“木材産地が豊かになるためには、木材需要の拡大だけでなく、川上つまり山を支える人々に富が還元されて、持続的に山に関われる環境がつくられなければならないってことだと思うよ”
ヨシコ
“ 富の還元  持続的に山に関われる環境  などなど   か!”

……………………        ブレイクタイム         ……………………

さて、「掛川産材を地場産業にする」の起承転結の起承まで話は進みました。
話が長くなってしまったので、ブレイクタイムを取ります、転結は次回としますね。


(*1)住宅用建築物(3階以下)以外の木造建築物(中大規模木造建築ポータルサイト)

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2022年10月03日

能「清経」  

能「清経」  

ヨシコ
“天高く、馬肥ゆる秋だー!”
クニオ
“秋とは関係ないけど、鎌倉の13人も少なくなりましたね”
ヨシコ“鎌倉といえば( ^ω^)・・・…  ”
クニオ
“鎌倉と言えば ( ^ω^)・・・…  ”
ヨシコ
“鎌倉幕府の成立の端緒は源氏と平氏の合戦、おごれる平氏の無念を描いた能「清経」を堪能してきました”
クニオ
“「清経」か)・・・…世阿弥作だね  誰が演じたの?”
ヨシコ
“観世流能楽師の「長谷川晴彦」さん、彼を囲う「掛川 能楽の集い」の主催でね”
クニオ
“長谷川さんて確か、掛川市の応援大使だったよね”
ヨシコ
“ウーン そうかな! 詳しく知らなくて (。>ㅅ<。)ゴメンネェ    ”


クニオ
”ところで「清経」ってどんな演目でしたっけ?“
ヨシコ
“清経って平清盛の孫なんだけど「悲運の中で入水し命を絶ってしまう」というエピソードを、世阿弥が能の演目に仕立て上げたってことらしいよ”
クニオ
“能って、非業の死を迎えた人々の魂が穏やかに成仏できず、この世に未練を残してさまよう …… そのさまよえる魂を慰める、慰撫し供養する芸能と言われているよね”
ヨシコ
“鎮魂の芸能ね!”


クニオ
“ところで楽しめましたか?”
ヨシコ
“事前に解説をしていただいたんだけど、よくわかったかと言えば嘘になるわね”
クニオ
“眠気に襲われなかった?”
ヨシコ
“それはなかったわ、半能で40分、私が集中できる時間ギリギリでした!”
クニオ
“それは、それは 祝着至極    ”

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Posted by pasarela at 19:29Comments(0)●徒然に思う

2022年09月15日

「気候風土型」という住まい その七 通風効果を考えた装置  

「気候風土型」という住まい その七
通風効果を考えた装置  



ヨシコ
“気候風土と言えば、室内を流れる「風」も重要な要素ね!”
クニオ
“僕らは皆「風」が好きだよね”
ヨシコ
“夏の夕方の縁台、素肌に心地よい涼風、風鈴の音、風に戯れる髪、五感で感じてきたわね”
クニオ
“風には名前もあるし……例えば「風の又三郎」とか”
ヨシコ
“宮沢賢治ね……私は「六甲おろし」かな、阪神ファンではないけど”
クニオ
“コチ(東風)、ハエ(南風)、ヤマセ(山背)  そうそう、俵屋宗達が描いた大胆な構図の風神は傑作だよね!”



ヨシコ
“ところで、風の正体って?”
クニオ
“温度差で起こる、高気圧から低気圧へ、海風と陸風、民家の知恵  かな”
ヨシコ
”そういう条件のもとで起こるってことね、ところで民家の知恵と?”
クニオ
”住まいの北側に冷気のたまり場をつくる、樹木のあるちょっとした庭なんだけど”
ヨシコ
”庭があると  ?”
クニオ
”南側は暑くて空気は軽くなり上昇気流が起こる、だけど北の庭は日陰になり低温で重く、下流気流が起こる、すると北庭から南に向かい風が流れる”
ヨシコ
”温度差で起こる風か   パチッ☆-(^ー’*)bナルホド  ”

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