2020年07月07日

土への回帰

土への回帰

 かつては建築材料の最もポピュラーな材料だった「土への回帰」を叫んでみたい。

 土は世界で最も手軽に手に入る建設材料、その工法は気候風土や文化的背景により多種多様で、世界の建造物の中で土の建築は3割程度を占めるといわれています。
 焼けば土器や煉瓦となるし、天日にさらせば日干し煉瓦となり、現在でも広く世界各地で建材として活用されています。
 さらに土は、自然素材で役割を終えても環境に負荷を与えません、まさに土に還るのです。
 日本では、その土を建築材料として利用したときから左官が始まりました。

土の質感と魅力がモロに体感できる版築


紅葉をあしらった色土の壁と日干し煉瓦の炉壁

 吉田兼好が「住まいは夏を旨とすべし」と述べたように、一時期、土壁は衰退し木と茅の家が主流となります。
 しかし、戦国の戦乱と薪から炭へと燃料の変化が、土を再び世に送り出しました、防火性と蓄熱性能に優れた土壁が見直されたのです。
 さらに茶の湯の「市中の山居」という現実から隔絶された別世界では、かつての土室がお手本となり、土壁の草案茶室が完成し、その後の民家建築のスタンダードとなりました。

 僕たちが土に対峙したとき、意識に深く訴える力、エネルギーを感じる事があります、その心地よいリズムは、戦乱の世の武将たちに、ひと時の心の安寧をもたらしたのかもしれません。

 土の表現は多様にして無限です、そんな土の魅了を通じて、住まいに「土への回帰」を叫びたい。
 新築したM事務所では「土への回帰」が重要なテーマでした、是非その魅力を感じ取っていただけれがと思います。  

Posted by pasarela at 10:44Comments(0)左官の魅力M事務所

2020年07月01日

「手仕事の家] 内覧会

 本物の「手仕事の家」の暮らしは、いつもの景色を少しかえる。

私たちが大切にしているもの、手仕事の美とフェアな精神です。

 少し変わる日常の景を体感していただければ幸いです。




■日時 2020年7月1日(水)〜7月5日(日)
   13:00〜16:00 (水〜日)  
■場所 御前崎市池新田

■構造 木造平屋建て

■問い合わせ 
清水建築工房一級建築士事務所 tel    0537-27-0576
e-mail info@shimizu-arc.jp
mobile  phone 090-6070-1091


新型ウイルス感染拡大防止のため、完全予約制で、1時間に1組限定でご案内をしています。
参加していただける皆さまにはマスク着用 、 会場に用意してある消毒液使用のご協力をお願い致します。
見学ご希望の方は清水建築工房一級建築士事務・清水まで、メールやお電話でご予約ください。所在地の地図をお送りいたします。
  

2020年03月14日

多彩な表情

多彩な表情


 荒らしもの、磨き、押さえもの、撫でものなどの仕上げ、土もの、漆喰、セメントなどの素材を生かす多様性、さらに複雑なかたちを自由に造形できる可塑性と、左官は多種多様な表現方法で魅了する。
 
 今施工中の事務所も左官工事の真っ最中、その多様な表情を紹介します。





床編
 セメントモルタル系の仕上げ、随時大きな力がかかる床などに使われれる仕上げに人造石仕上げがある、この人造石は表面強度を上げるために高品質の骨材(種石)を混入して、耐久性を高める仕上げで、高級感も得られる。

その骨材(種石)の大きさや種類により洗い出し、テラゾ、研ぎ出しと施工と仕上げ後の表情が変わる。


 研ぎ出Ⅰ 種石に貝殻(貝殻の内側、虹色光沢を持った真珠層の部分)と寒水を混入。


研ぎ出Ⅱ 色モルタル+種石の寒水(大理石)を入れ研ぎ出す。


研ぎ出Ⅲ 色モルタルで自由造形  

Posted by pasarela at 11:12Comments(0)左官の魅力M事務所

2019年09月13日

土から始まる 版築の魅力 

土から始まる 版築の魅力  

 
近年、版築が注目されているという、どうしてだろう。

 土は最も手軽に手に入る建設材料、その工法は気候風土や文化的背景により多種多様です、世界の建造物の中で、土の建築は3割程度を占めるといわれています。
 さらに土は、自然素材で役割を終えても環境に負荷を与えません、まさに土に還るのです。

 僕たちが土に対峙したとき、意識に深く訴える力、エネルギーを感じる事があります、心地よいリズムを感じるのです。

 特に厚い土の壁となる版築は、その迫力とともに、僕たちは心地よいリズム、すなわち土の鼓動を感じるのです、この鼓動が心にやすらぎを与えるのだと思う。

 今回厚さ5cmの版築でアポローチの壁を構成、緩やかに湾曲する壁に導かれて玄関に至る、土の洞窟の奥に踏みいるという設定です。

湾曲する版築壁の向こうに入り口(入り口の板戸は仮の戸)


版築のテクスチャー

足下

 *版築とは、土を型枠に入れ、上から突き固めて5~6割程度に圧縮した層を積み重ねる構法のこと。
  

2019年07月23日

建前その2 上等な上棟

建前その2 上等な上棟





次回は竹小舞い掻きです。  

2019年07月15日

建前(渡り腮構法の家)その一

建前(渡り腮構法の家)その一  

 M事務所は、掛川の風景を創る会が、時ノ寿木組みの家で提案している「渡り腮構法」と呼ばれる構造システムで建てられた木造の建築。

 
 時ノ寿木組みの家」は掛川の木を使い、深い軒・土壁・三和土で住まいを整え、立体通風、多面採光、日射遮蔽と取得、蓄熱と蓄冷による健康的な空気質の住まいを目指している「土壁+木組みの家」。

 その建て前を動画でどうぞ。

 その一では柱建てを、一般的な在来木造住宅とはひと味違う柱立てをご覧ください。



  

2019年07月11日

2年の眠りから覚める

2年の眠りから覚める

 古い建具を活用することにした、約70年前に祖父・祖母の時代に建てられ、12年前に建て替えられた時、捨てずに取っておいた建具がやっと日の目を見た。


腰付き額入り筬格子戸 土間側 
  千本格子とも呼ばれる、細いあって格子を筬(おさ)状に配した格子戸、民家
  定番とも言える建具


 そしてこちらが見返し
 
 少し大げさな表現だが、12年の眠りから覚めた建具達、保管状態もよかったので、少し手を入れれば十分活用可能だ。




 時ノ寿木組みの家では古建具を積極的に活用している
→→木製建具の記憶
→→ゴミを出さない家づくり






  

Posted by pasarela at 20:08Comments(0)M事務所

2019年07月08日

焼き杉張り

焼き杉  




 
 焼き杉とは「焼いた杉の板」の外装材のこと、岡山など山陽で多く用いられている外壁材で、表面(1分ぐらい)を炭化させる事で腐食や延焼から守る効果がある。


 M事務所では施主自ら焼き杉を制作した→→ブログ”焼き杉です"

だから、施工もセルフビルド、張り方はプロでなくても自ら補修可能な目板押さえとした。




 コーナーは留めで仕上げた、炭化して角がもろくなっていたが、綺麗に収まった、ここは本職の大工の仕事。


 
 既製品でなく自ら制作しただけに炭化表面の鱗もくっきりとでている、既製品だと焼き杉といっても中途半端の焼き具合が多く、炭化層も薄いので、数年でなくなってしまう事がおおい。


 上部は白色のリシン掻き落とし、白と黒のコントラストがどう映えるか楽しみ。
  

2019年07月06日

貫伏せ

貫伏せ

 土は乾燥するとひび割れを生じる、貫の部分は特に割れやすいので、藁や棕櫚(シュロ)で補強する必要があり、その補強を貫伏せと呼びます。

貫伏せ前

貫伏せ中シュロ伏せ込み

貫伏せ中土かぶせ

貫伏せ後

 貫伏せの工程は、荒壁の裏返しの土の乾燥具合をみながら行うが、この貫ふせの土も荒壁土と違って、もっときめ細かく、混入するスサも少し細かめの藁を使う。

 貫伏せ後→おお直し→中塗り→仕上げと進む、どの工程も手抜きはできない、手抜きをした途端、土壁は命を失う。


 ”ふと思う”

 現在の家づくりは、合理化・省力化(僕に言わせれば手抜き)のかけ声の元に簡素化された家づくりに終始している、その行為から本来有るべき住まいの息吹(例えば土壁作業は、竹小舞掻きや荒壁塗りなど一家総出での大仕事、そこに家を建てる住人の誇らしい息吹を感じる)を感じ取る事ができないと思うがどうだろう。
  

Posted by pasarela at 19:11Comments(0)M事務所

2019年05月19日

土壁の家の楽しみその一: 家づくりをすまい手に取りどす。

土壁の家の楽しみその一: 家づくりをすまい手に取りどす。 


 現代の家づくりは、ハウスメーカーやビルダーに一括依頼する方式や販売される住宅を購入する方法が主流です。

 建築主:すまい手は家づくりにほとんど関わりませんね、最近壁塗りやなどにすまい手を参加させて、家づくりの実感をちょっぴり味わってもらおうという手法で、すまいて参加を詠っている工務店も散見されますが。


 かつて、家づくりは地元の職人をはじめ、すまい手やその親戚もが関わる中で進められました。
 僕の実家もそうでした、半世紀も前まえですが、家族総出でで親戚も交えて土を塗り、さらに、土を塗る前の竹小舞い掻きには、竹を縛り付ける藁縄を何本も腰にタラして、子供心にも、一人前の職人になったような誇らしく思った記憶があります。

 「時ノ寿木組みの家」は渡りアゴ(月編に思)構法で木を組み、土と竹で壁をつくる構法で家づくりを行っていますが、最近特に感じるのが、土壁の家の楽しみは、その参加性にあるなということです。

 家をつくる材料を手に取り、施工に参加するからその使い方も理解できる
  あなたは、あなたに出来る小さな仕事に参加し、丁寧に、楽しみながら、手の跡が残る、記憶に残る家づくり。
  
 すまい手参加は、本来の家づくりのあり方だなと改めて実感した。
 












  

Posted by pasarela at 18:53Comments(0)M事務所