2023年11月27日

王朝の色に挑む

王朝の色に挑む             

クニオ
“鮮やかにして冴えざえ!”
ヨシコ
“気高くして優美な美しさ!”

そのまばゆい色彩に魅了され二人は、いつになく上気した気分に包まれている。



「王朝の色に挑む」は「染司よしおか」が、すでに失われてしまった自然の染料による伝統の色の再現に挑み、あくなき探求心と情熱によりよみがえらせ、(*1)ここ岡崎市立美術博物館にて開催された。

清少納言や紫式部が登場した王朝文化の華やかな平安中期(10世紀〜11世紀)頃に、女房の装束のいわゆる「十二単」(*2)が誕生したと言われている。
十二単は袿(うちぎ)(*3)と呼ばれる複数の衣を重ねることが基本、色や袷(あわせ)(*4)の衣服の表地と裏地の色の組み合わせを襲(かさね)と呼んだ。

女房装束

俳人・詩人の安藤次男(*5)によると、日本人の色彩感覚の基本が「重ねる」=色の組み合わせ(色目)にあるらしい。

重ねの代表的なものに「襲」の色目がある、会場では「染司よしおか」が見立てた初夏の彩りとして「夕顔の襲」が春の彩りとして「藤の襲」が展示されていた。

「染司よしおか」5代目当主の吉岡幸雄は「夕顔の襲」を「中央の黄色は夕顔の花心を見せ、やや濃い緑の葉を背に白く咲く花は、夕暮れの風と共に涼なる心地がする」(*6)と思いを寄せている。

夕顔の襲

藤の襲
クニオ
“原色のように生な色をそのまま見せることを良しとしない王朝の美意識って何だろう”
ヨシコ
“色を重ねて行くことで、色が「うつろう」という感覚があるんじゃない”
クニオ
“なるほど、「うつろう」は移り変わるってことだよね、その変化が色の深みを増す”

ヨシコ
“えーと、色を何層にも重ねることで、色が美しく映りあうってこともあるわよね”
クニオ
“単色では得られない色の深まり、「重ね」の魅力の一つだよね”

色を重ねるという美意識は十二単の華やかな装束を生み出したが、その美意識の深まりは、王朝人をして、単色を愛でることだけでは飽き足らず、透かすして見る・見せるという感覚を触発せずにはおかなかった。

 例えば、源氏物語の夕顔では
「この家のかたはらに、檜垣といふもの新しうして、上は半蔀四五間ばかり上げわたして、簾などもいと白う涼しげなるに、をかしき額つきの透き影、あまた見えて覗く」(*7)という光景が描かれている。
ヨシコ
“光源氏が夕顔を蔀(しとみ)越しに見初める光景を描いているね”
クニオ
“蔀越しに、美しい様子の女房のシルエットが、たくさん透いて見えてこちらを覗いているって光景”
ヨシコ
“生(き)のままでは野暮、霞が掛かっている方が美し ( ゚ー゚)( 。_。)ウン♪ てことね”


 原色のように生な色をそのまま見せることを良しとしない美意識は、日本人に通底奏音のごとく横たわる美意識の芽生えかも……。

几帳

(*1)「王朝の色に挑む 」パンフレットより抜粋  岡崎市美術博物館
(*2)十二単という名称は、文献上女房装束(にょうぼうしょうぞく)、裳唐衣(もからぎぬ)等と呼ばれていた装束の後世の俗称。
(*3)最盛期には十数枚重ね着されたが、平安時代末期から5枚に落ち着いた。
(*4)袷とは、裏地のある長着のこと、これに対して裏地のないものは単(ひとえ)と呼ばれる。   (*3)(*4 )出典:ウイキペディア
(*5) 安藤次男 1919年〜2002年 俳人・詩人・評論家
「重ねる」のくだり……日本の色 大岡信編 朝日選書
(*6)日本の色を知る 吉岡幸雄 角川ソフィア文庫
(*7) 訳
この家の隣に、檜垣という檜で作った垣根を新しく作って、上の方は半蔀を四、五間(けん)ほどずらりと吊り上げて、簾などもとても白く涼しそうな所に、美しい額の様子のシルエットが、たくさん見えてこちらを覗く。
(*8)透き影 薄い物や物のすきまをとおして漏れる光

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Posted by pasarela at 21:34Comments(0)