2021年04月30日

座敷が接客空間だったころの上質な天井 

座敷が接客空間だったころの上質な天井    

 「家」で成人式、結婚式、年忌法要等が行われていた時代、座敷はそれら「ハレ」や「ケ」のための重要な接客空間であり、住まいにとって表の領域だった。

  座敷は家人以外の他人が出入りする場所なので、他人の目を意識した室礼や細部にわたって上質な仕事が求められた、そんな仕上げに竿縁天井がある。


 今回、紹介する座敷は、RC造の既存衣裳部屋の改修でリニューアルした9畳の前室付の広間、天井は竿縁天井で設えた。
 竿縁天井は全く久しぶりなので、竿縁天井が仕上げるまで、天井板の選定から、加工、施工の工程を紹介したいと思います。


①天井板の選定
  大工さん下小屋にストックしてあった杉板が、中板目(*1)の上、板目の流れに勢 いがあり即決定。
②加工された杉板


③輪返しと刃口が仕上げられた状態   ④鉋で板を削り羽しゃくりをつくる


⑤ 稲子釘を取り付ける ⑥板の重なりの部分に隙間ができないように稲子を差し込んで2枚の板を結ぶ。


⑦天井一部完成 ⑧天井板の2枚の重ねの隙間を松葉と呼んでいる、その表現力に脱帽 (o-´ω`-)ウムウム

ちなみに壁は色土で仕上げます。

*1)板の中央に板目があり、両側に柾目が通った板材、そのうち、板目が元から末まで   通った板材を中杢と言って高級材として取引きされる。

  

2021年04月17日

省エネの流れを分かり易く…外皮基準 

省エネの流れを分かり易く…外皮基準           

クニオ
”さてヨシコさん、やっと改正省エネルギオー法の入り口までやってきました”
ヨシコ
”これまではエネルギー輻射熱湿度結露のお勉強でしたね”
”4月から施行されている改正省エネルギオー法では、外皮基準とエネルギー消費量の両方で規制して省エネを図りましょうと云うことでしたが”
クニオ
”そうですね、ではまずは外皮基準の説明から始めましょうか”
ヨシコ
”外皮基準は住まいの断熱性能を決める、そして断熱は健康や快適そして省エネを決める重要な要素だったわね”

クニオ
”オーさすがヨシコさん、早速、勉強の成果が出たね”
”外皮基準では「外皮平均熱貫流率UA値」と「冷房期平均日射取得率ηA値」の二つの基準をクリアすることが求められます、下図のように8地域に応じて基準値が決められています”

ヨシコ
”あちゃー UA値とηAって  Σ( ̄ロ ̄lll) ガビーン”
クニオ
”(^―^) ニコリ まー聞いてください…外皮平均熱貫流率UA値は住まいから逃げる(侵入する)熱の量を算定する値です”


ヨシコ
”私が子供のころ住んでいた住まいは隙間風がヒューヒュー! 今考えると暖を取っても熱は逃げ放題(侵入し放題)だったのね”
クニオ
”1980年代以前の住まいは、ほぼ無暖房状態でしたね、省エネという言葉さえありませんでした”

クニオ
”続いて、冷房期平均日射取得率ηA値は、夏場、住まいに差し込む日差しの量を算定する値です”
”ところでヨシコさん、子供の頃、縁側で日向ぼっこをしませんでしたか?



”そうねー  おばあちゃんがよくしてたわね、冬の日差しは暖かくてついウトウトしてしまうような(*^ワ^*)”
クニオ
”冬は冬の日差しは大歓迎だけど、夏の日差しは大敵だと思いませんか”
ヨシコ
”思います、だって夏の紫外線はお肌にとって大敵でもの(。-`ω´-)”
クニオ
”(人ω<`;) お肌もそうですけど、夏の日差しは、いや日射と言った方がピンとくると思うけど室内に熱の塊を送り込むからね”
ヨシコ
”異常に暖まった部屋を冷やすには余分なエネルギーが必要だし、家計の上でもマイナスですから”
クニオ
”だから、夏の日射遮蔽は省エネ上極めて重要な指標になるんだ”
ヨシコ
”UA値とηA値ですね、勉強になりました忘れないように覚えておきましょう”
クニオオ
”了解をいただいたところで、冷暖房設備にしょう、賢いエアコンの選び方なんてどう?ヨシコ
”UA値とηA値より、そっちのほうに興味が湧くわね、じゃーまた”
エネルギー12/28
  

Posted by pasarela at 16:59Comments(0)省エネを分かり易く

2021年04月14日

省エネの流れを分かり易く…冷暖房の省エネ 

省エネの流れを分かり易く…冷暖房の省エネ   

春の日差しを浴びて一人佇むヨシコさん

クニオ
”ヨシコさん、どうしたの?”
ヨシコ
”行く春を惜しんでいるのよ(p>□<q*))”
クニオ
”行く春? 詩的だね「行く春や 近江の人とと をしみける」芭蕉 って心境?”
ヨシコ
”それもあるけど、この心地よい陽光を浴びていると、冬の凍てつく寒さや夏の猛暑が嘘のように感じるのね!”

クニオ
”なるほど、本当にそうだね”
ヨシコ
”でも冬も夏もやってくる”
クニオ
”その時、省エネに関する知識不足が、お財布的にも将来にも致命的な打撃を与えかねないと言いたいね!”
ヨシコ
”おや、評論家のような口調ね o( ̄‐ ̄*) ”
クニオ
”でも近い将来に日本が冬と夏だけ、四季でなく二季になってしまってからでは遅いからね”

ヨシコ
”そうするとやはり住まいの最初のステップは暖冷房の削減ね”
クニオ
”一口に暖冷房の削減と言っても、それを達成するために考慮しなければならない項目を押さえておかないと、努力も空振りに終わりかねない”
ヨシコ
”その項目って?”
クニオ
”外気温、断熱性能、暖冷房の範囲、暖冷房設備の4つのです”
ヨシコ
”えーと、外気温てコントロールできないし、暖冷房の範囲とは?”
クニオ
”暖冷房の範囲はLDKの間歇運転(*1)か全館連続冷暖房(*2)かってことだけど”
ヨシコ
”間歇か、で、その場合いつ運転開始していつ止めるの?”
クニオ
”下図1が間歇冷暖房の根拠となるのスケジュールです”


ヨシコ
”冷房は就寝中も運転している設定ね…結局、断熱性能と冷暖房設備(エアコンなど)で決まるってことですね”
クニオ
”はい、断熱性能が高ければスケジュール以下で運転できるってことになるから、相乗効果でさらに省エネになりますね”
ヨシコ
”なるほどね、では次回は肝となる断熱性能決定の根拠となる外皮基準と冷暖房設備のお話を伺いましょう”
クニオ
”(*′ω`)b゛ок!!”

(*1)間歇運転
 住まい手が在室している時間のみ主たる居室を暖冷房をおこなう運転方式
 主たる居室とはリビング、ダイニング、キッチンなど比較的在室時間の長い居室
(*2)連続運転
 住まい手が部屋にいない場合も含めて24時間暖冷房を行う運転方式
  

Posted by pasarela at 18:18Comments(0)省エネを分かり易く

2021年04月12日

「自転車ララバイ 「ねむの木村」行2

「自転車ララバイ 「ねむの木村」行2    

「 ねむの木村」行きは昨年の8月以来の2度目、昨年はコロナ禍で休園中だったが今回は如何に!

 実は本来の目的地は「五明彗星発見の地」、たけど、存外に早くスムーズに到着してしまったので、さらに足を延ばそうと思い至り「ねむに木村」を訪れることとなった。

 「五明彗星発見の地」は、萌黄色に染まる茶畑を眼下に見下ろす気持ちの良い一
角にあったが、予想に反して発見の碑があるだけの質素な場所、車で行ったら見逃しそう。



 暫し休憩の後、「五明彗星発見の地」を一気に下り、ほたるの里を横目に一路「ねむの木村」へ。

 「ねむの木村」は予想どうり静まり返っていた、しかしこちらとしては車の往来がないだけに好都合、吉行淳之介文学館の前で一服。

 すると文学館の玄関戸が開くではないか
   ”オープンしてます?”
   ”はい”
”現在文学館と子供美術館をオープンしてます、両館の共通券を販売中です”
とのこと、それではと入館。

 入館者は我々だけ、順路無視して気ままに鑑賞できる、あっちに行ったりこっちに行ったり、ロビーも独り占め、別館は宮城まり子氏コレクションの展示室、ガラスのカップなどの食器が多数、カラフルにしてシンプルな食器を好んだようだ。

 文学館・子供美術館の意匠は、堅木の名栗(なぐり)がポイントとなっていて随所に見られた、写真のテラスの床材も同じ工名栗加工が施してあったが、ゴロリと横になり目を閉じる!


 誰にも邪魔されず貴重な時間を瞑想にて過ごす。

 桜も散り春たけなわを存分に堪能した一日でした。
  

Posted by pasarela at 18:37Comments(0)日々これ好日

2021年04月09日

不快な熱い天井と冷たい壁

不快な熱い天井と冷たい壁

クニオ
”頭寒足熱って聞いたことあるよね”
ヨシコ
”知ってるわよ!人体って上半身と下半身の体温を比べると、下半身の方が低いらしいわね、だから血行を良くして上と下の体温の差を小さくいすることが肝要で、それを称して頭寒足熱ってことでしょう”*1)
クニオ
”血行をよくなることで、免疫力や自己治癒力(治す力)を高めることができると言われていますね”
ヨシコ
”処で頭寒足熱がどう展開するのかな?”

クニオ
”断熱性が低い住まいでは、頭寒足熱でなく頭熱足寒が常となりやすく、頭熱足寒の状態が続くと病気になりやすいと”
ヨシコ
”ほー これって輻射熱が大いに関係してるって話になるのかな?”
クニオ
”前回は輻射が引き起こす体感への影響について述べましたね”
”アメリカ空調学会の研究では、壁と天井の表面温度のムラから、人体が感じる不快感について、図のように、一番不快に感ずる状態は熱い天井、続いて冷たい壁だと指摘しています”


ヨシコ
”これって完全に頭熱足寒の状態といえますね”
クニオ
”夏の熱い天井からの輻射熱=熱波は強烈だし、冬の寒い壁からの冷輻射は体から熱を奪い取ります”
ヨシコ
”大開口の窓も閉口ね、冷輻射をビシビシと感じるわ”
クニオ
”結局、夏も冬も断熱性能を高めて、住まいから熱い天井と寒い壁を無くすことが、快適な暮らしを営むカギとなるってことです”
ヨシコ
”実感してます”

ヨシコ
”次回は?”
クニオ
”4月に入り、すでに改正省エネ法が施行されているから、次からは「省エネの流れを分かり易く」シリーズを再開しましょう”
ヨシコ
”ラジャー” 
  

Posted by pasarela at 19:38Comments(0)省エネを分かり易く

2021年04月07日

輻射熱って侮れないな

輻射熱って侮れないな              

ヨシコ
”世は清明、自宅から眺めは、まさに春たけなわね!”
クニオ
”今日は本当に長閑な日和だね〜”
ヨシコ
”今日のお話、ヒバリのさえづりのように聞けたらいいんだけど”

クニオ
”ムム!無理言っちゃいけません、(*´Д`)=3ハァ・・・
今日は気温と体感のお話です、人体と包む環境との熱のやり取りです”
ヨシコ
”知ってるわよ、熱のやり取りは「放射(輻射:以降輻射と表現)」「対流」「伝導」と云う現象が介在するんでしょう、高校の物理ね”
クニオ
”そうです、熱のやり取りは、人体を取り巻く壁や天井との間の「輻射」、皮膚を取り巻く空気とのやり取りに介在する「対流」、直接に床や壁に接触することによって伝わる「伝導」、それから冷却システムである発汗による「蒸散」によって行われています”
ヨシコ
”図1ですね、輻射によるやり取りが大きいね”

図1 室の温度条件が比較的快適で軽作業の時の人体から発散する熱の割合 
出典 健康な住まいづくりハンドブック 建築資料研究社 p145


クニオ
”そうなんです、室内の場合、皮膚からの発汗や対流による熱のやり取りよりは、輻射による熱のやり取りの方が大きいことが知られています”
ヨシコ
”ほー! でも。いまいち輻射ってどんな現象かわからないんだな”
クニオ
”輻射って、太陽が発する熱と同じで電磁波の形で熱エネルギーを伝えます、空気などが中継する必要がなく、人体を含めてあらゆる物体が発しています”

ヨシコ
”ひょっとすると遠赤外線のこと?”
クニオ
”ピンポーン!”
”で、輻射による熱のやり取りは、室内の壁や天井の輻射温度(壁と天井の平均表面温度)が大いに影響します”
ヨシコ
”ということは、例えば冬の場合、輻射温度が低いと輻射によって私の体温が奪われて体感温度が下がり、結果室温を上げないいけなくなるってこと?”
クニオ
”ご明察!”
”夏の場合その逆になります!”

ヨシコ
”外壁や天井は外気温の影響をモロに受けるから、断熱が大切なわけだ!”
クニオ
”はい!”




  

2021年04月04日

「異流共演 能楽至高の花 「源平の絆」

「異流共演 能楽至高の花 「源平の絆」

4月、すでに晩春、桜に誘われ熱海まで「能」の鑑賞に出かける。

MOA美術館 エントランス

 「異流共演 能楽至高の花 「源平の絆」   MOA 美術館能楽堂


異流とは観世流と宝生流、2流の競演でなく共演が味噌。
「橋弁慶」と「二人静」では宝生流の辰巳満次郎、観世流の梅若実玄祥(人間国宝)が一調を披露し、第二部では舞を共演した。
 
 興味深かったことは、第二部の『義経記』などに取材した能楽作品である「安宅」の舞囃子(謡:梅若実玄祥)で舞った辰巳満次郎が、観世流の謡の間合い(拍とツメ)や韻との合わせに流派の微妙な違いがあって、苦労したと述べていたこと。

 宝生流の芸祖は観阿弥の長兄・宝生太夫だが、同じ能でも流派が違えば「近くて遠い」存在なんだなっと思った次第。


MOA美術館ロビーより相模湾
 春の熱海はのどけからまし

一調
能の打楽器(小鼓、大鼓、太鼓)一人と、謡一人で演奏すること。囃子は常とは変わって一段と技巧を凝らしたものとなり、謡も囃子の演奏を生かすように謡う。囃子と謡の魅力を十分に楽しむことができる演奏形式である。
 出典 能学用語事典

舞囃子 (まいばやし)
  能 のある曲の中の舞所だけを取り出し、 シテ 一人が 面 ・ 装束 をつけず、 紋服 ・ 袴 のままで、 地謡 と 囃子 を従えて舞うものを指す。
最も面白い部分だけを演じるため、能のダイジェスト版と言える。
  

Posted by pasarela at 12:04Comments(0)