2021年01月16日

吸い付け残はシャドーワーク・松ヶ岡で思う

吸い付け残はシャドーワーク・松ヶ岡で思う。

「松ヶ岡」とは掛川の発展に尽力した偉人(山﨑氏)の邸宅の通称だ、掛川市民が彼らの業績に敬意を表し、親しみを込めて「松ヶ岡」と呼ぶ。
 「松ヶ岡」は国の重要文化財指定に向けて保存工事中、昨日現場見学会が開催された。

「松ヶ岡」の主屋は安政3年(1856年)に建設され、その後何回となく増改築が繰り返されて現在に至っている。

 吸い付け残はシャドーワーク・松ヶ岡で思う
 
 主屋の北側に、後に増築された風呂・便所棟がある、ここの屋根の工夫が秀逸なので、まずはここからお話を始めたいと思う。

 さて何が秀逸かというと、野地板の反り止めだ。

 風呂は当然のことであるが湯気によって天井裏も湿度が高くなる、そうすると野地板の天井内面は外気側面より膨張するので外気側に反る。
 屋根材の下地である野地板が反れば、屋根材のどこかにひずみを生じて雨漏りに発展する可能性がある、当主も大工もこれまで随分と頭を痛めて来たことだろう。

 そこで大工達の行った工夫はこうだ。
吸い付け残はシャドーワーク・松ヶ岡で思う
野地板が反らないように野地板に吸い付き桟を施した、吸い付け桟は板の反り防止で施す加工で、それ自体は驚くほどのことでもないが、野地板の外気側のこの工夫は屋根を施工すれば一生日のみを見ることはない。

 文化財としての修復工事だからこそ、この工夫は日の目をみを見たことになる。
現代なら透湿抵抗の高い材料で湯気を遮断して終わり、なんとも味気ない行為だと嘆息を漏らさざるを得ない。
 
 以前シャドーワークが日本製品の高品質化に大いに貢献していると述べたことがあるが、吸い付け桟も木の特性に従ったシャドーワークにあたる、そのひと手間、ふた手間が「松ヶ岡」の質の向上と長寿命化に役立っていることは明らかだ。

 誇り高い現代人にとっても見習うべき事例と思う。


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