2024年04月05日

能はこんなに面白い」 その二   

能はこんなに面白い」 その二     2024 3/13

能「石橋」(宝生流) 後場

突如として赤と黒の獅子が出現し、紅白の牡丹に戯れ激しく乱舞する連獅子の振る舞いが後場の見どころだ。

ヨシコ
“連獅子の乱舞に もうー 釘付け!”
クニオ
“舞台を圧倒してたね”
連獅子の威風堂々とした舞に心をわしづかみにされた二人。

ヨシコ
“獅子って霊獣(*1)でしょ”
クニオ
“文殊菩薩の乗り物だよね”

日本の釈迦三尊では、左脇侍に獅子に乗った文殊菩薩、右脇侍に白像に乗った普賢菩薩を配する例が多いと聞く。
ヨシコ
“文殊菩薩の使者でもあるんだって”
クニオ
“乗り心地はどうなんだろう―”
一度、乗ってみたいものだと妄想を立ち上げているクニオ。

ヨシコ
“はー !”




連獅子の乱舞はあたりを払い息もつけぬほどだ。

獅子団乱旋(とらでん)の舞楽のみぎん
獅子団乱旋の舞楽のみぎん。
牡丹の花房、匂い満ちみち。
大きんりきんの獅子がしら。
―中略―
万歳千秋と舞いをひさめ。
万歳千秋と舞いをひさめて。
獅子の座にこそ、直りけれ。

出典ウイキディペディア

「花に戯れ、枝に伏して転ぶ獅子の乱舞は、そのまま、千秋万歳、天下泰平のめでたさを祝う舞に外ならない」と山折哲雄(*2)は言う。
獅子は、千秋万歳、天下泰平と舞い納めて「獅子の座」(*3)に直る。
 
ところで能楽は「小書」(*4)なる手法で各流の主張に沿った演出をする余地を残している、今回のグランシップ静岡能では「小書」を使い新しい演出を披露した。

「疫病(コロナ)が我々に不安と恐怖を引き起こした、その不安と恐怖はさらに対立をも生みだしてしまう現代社会の脆弱性を能楽で表現したいという思いに駆られ、新しい演出を試みた。
対立を示す赤獅子と黒獅子が乱舞する、しかし対立や苦難を乗り越えた先に成熟(天下泰平)がある事を「小書」という形で残すこととした」
宝生流第20代宗家 宝生和英

ヨシコ
“宗家の気持ちはわかるけどねー…………赤と黒が対立の象徴と言われてもね   

その深いメッセージが読み取れず少々不満げなヨシコ。

クニオ
“シンクロしてたからね”
ヨシコ
“対立なんて想像もできなかったでしょう?”


この「わからない」をどう捉えたらいいんだろう……“うーん”……しばしの沈黙と思案ののち  ハットして膝を打つヨシコ ‼ 
  
ヨシコ
“「能を理解するには事前に特段の予備知識が求められる」って聞いたことない?”
クニオ
“あるある、日本の様々な古典が引用されているって……”


仏典や漢籍、「万葉集」あり「新古今和歌集」あり「源氏物語」や「平家物語」あり故事来歴ありと様々な古典や書物から引用されている。(*5) そう、能は予備知識が必要なんですね。

ヨシコ
“うーん でも古典の予備知識がないと楽しめないって言われたらねー”
クニオ
“「能はこんなに面白くない」になっちゃうね σ(´-ε-`)ウーン ”

その時、ある事に気付くクニオ   ‼

クニオ
“そうそう、内田樹(*6) さんが 面白いことを言ってたよ”
ヨシコ
“どんな事 ? ”
クニオ
“こう楽しみなさいっていうマニュアルがあるわけじゃないから「わからいなら、わからないなりに勝手に妄想を立ち上げて楽しめばいい」って”

能の作者は自作の能をこんな方向で理解してほしいと観る人に強要しない、観る人のその時の精神状態や教養に任せ、何を観て感じるかはその人に任せられている。(*6) 

ヨシコ
“マニュアルなし 妄想あり 観る人任せ  か   ”
クニオ
“そういう事”

妄想を立ち上げるから面白い …… 二人はそう思った。


(*1)霊獣
神の使いや神と特別な関係のある動物をさす。
(*2)「能を考える」  山折哲雄著  中央公論新社
(*3)「獅子の座」) 釈迦が説法の際に座す宝座のこと
(*4)小書(こがき):
能楽の特殊演出のこと。番組で曲名の横に小さく表示することから、小書と呼ぶ。
(*5)「能はこんなに面白い」 観世清和+内田樹 小学館 
(*6)「変調 日本の古典講座」  内田樹+安田登 祥伝社





  

2024年02月06日

「能はこんなに面白い」 その一 

「能はこんなに面白い」 その一     2024 2/6

「石橋(シャッキョウ)」はドラマチックな能と言われている、古代中国の唐土清涼山の石橋を舞台に、前場と後場が劇的に変わる演出は見ものだ。
グランシップ静岡能(*1)で披露された石橋は小書(*2)により新たな演出を取り入れた意欲作だ。


能「石橋」(宝生流) 前場
「出家して寂昭法師と名乗る大江定基は、清涼山(唐)の文殊浄土に係る石橋の麓に着く、そこに現れた樵童(しょうどう)は、石橋を渡ろうとする寂昭法師を止め、渡る事の困難さを示し暫くここで待てと告げて去っていく」



ヨシコ 
“前場と後場では演出がガラッと変わるのね”
クニオ
“いかにも眠気を誘う前場!”
ヨシコ
“あくびを押し殺すのが大変だったわよ”
クニオ
“僕も でも、地謡の心地良さに包まれて、ついっていう感覚だけど”
ヨシコ
“??・・・”
クニオ
“ほれ声明だよ、地謡方の微妙な呼吸と謡の重なり合いがね 声明のようにだんだんと厚みのある響きに包まれて……なんとも心地よく感じなかった?”
ヨシコ
“そういえば ウーン  ゆりかごでまどろむような ”


 二人にとって地謡方とのシンクロは、能の魅力の新しい発見だった。


 宗教学者の山折哲雄氏は、石橋を観た時、即座に二河白道図をイメージしたと言っている(*3)、二河白道図とは浄土信仰に基づく宗教画である。
 二河白道は中国古代の善導が極楽往生を進める比喩として発想されたようだ。二河とは火の川(怒り)と水の河(貪欲)のこと、二河の間に白い道が通っている、道をたどれば浄土・極楽に達する、その白い道は深い信仰心を持つ者の前に一筋の道筋が現れる  と信じられていた。

ヨシコ
“でも、能って写実的でないから、石橋が懸崖で地獄のような深い谷に渡された橋だなんてイメージできないわよ”
クニオ
“能の舞台は省略に省略を重ねて極めて簡素、演技も具象性を排除して限りなくシンプルだからね”    
ヨシコ
“それでイメージしろなんておかしくない”
クニオ
“そこ々、その間を想像力で埋めろと言われているよね”
ヨシコ
“想像力で完成させる?“

省略し余白をつくる事、表現し尽くさず、何も描かれていない余白を作者と鑑賞者が想像力の限りを尽くして完成させる、能が省略を美とする演劇と言われる所以だ(*4)

クニオ
“そこが能の奥深いところだよ  きっと  そこに はまるんだよ!”
ヨシコ
“まー 二河白道を知ってたら、よりリアルに浮かぶかも”
クニオ
“山折哲雄氏は「石橋は二河白道のイメージに導かれて創作されたのではないか」とも言ってるよ”
ヨシコ
“そうなんだ、能って様々なジャンルの古典や仏典などが引用され折りたたまれているのね えーと 芸能の有職故実?”
クニオ
“??・・・”



ワキ「謂はれを聞けばありがたや。ただ世の常乃行人ハ。左右なう渡らぬ橋よなう」
シテ「御覧候へ、この瀧波乃。雲より落ちて、数千丈。瀧壺までハ、霧深うして。身の毛もよだつ、谷深み」
カカル ワキ「巌峨々たる岩石に」
シテ「僅かに懸る石の橋」 
ワキ「苔ハ滑りて足もたまらず」
シテ「わたれば目も眩れ」

と謡い上げられた時、見所の僕らは石橋の両側は深い谷にえぐられ、奈落の底は霧の中、懸崖で地獄のような深い谷の光景がイメージできるのだ。
とても人力では渡る事ができない、仏力を得たものだけに許される…………。



クニオ
“ふ― ここで一息入れません?”
ヨシコ
“そうね、お茶にしましょう”
ヨシコ・クニオ
“前場の「序」から後場の「急」へ(*5)  赤と黒の連獅子が登場しますよ、ご期待くださいね。“


To be continued

(*1) グランシップ静岡能で上演 石橋の他に能:鶴亀、狂言:佐渡狐能。
(*2)小書 the能com
狂言の特別な演出のこと。番組の曲名の左脇に、演出の名称が小さく表記されることから「小書」という。小書をまったく持たない曲もあるが、小書を複数持つ曲も多く、複数の小書を組み合わせて曲を演ずることもある。 
(*3)「能を考える」 中公業書  山折哲雄
(*4)「能はこんなに面白い」 小学館 観世清和・内田樹  表題もこの書名をいただきました。
(*5)「序・破・急」 the能com
序破急は能・狂言の演出理論のひとつで、構成・演出・速度などを3段階に分けた考え方。雅楽にある語を取り入れたと言われ、能の大成期にはすでに用いられていた。
 序は導入の静かな部分、ゆっくりとした拍子にはまらない部分、破は中心となる展開部、急は終局に向けた部分というように分けられている。

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2024年01月10日

文字(書)は絵の恋人

文字(書)は絵の恋人                    2024 1/10              


「森は海の恋人」というフレーズを聞いたことがあるだろう、海と森は食物連鎖や自然環境の面で密接な関係にある事から命名されたと聞く。
日本美術にも絵画の構成要素が互いに密接な関係をもって絆を深めたジャンルがある、文字絵(*1)というジャンルだ。
 
文字絵は文字(書)と絵それぞれが絡み合い、響き合って絵画の魅了をさらに高めることができる、まさに「文字(書)は絵の恋人」である。
特に、やまと絵の世界で、葦手(あしで)という手法がちりばめられた作品は日本固有の絵画(絵画に限らないが)と言ってもいいのではないか。(*2)


クニオ
“やまと絵の特徴の一つとして文字(書)と絵の融合があげられるじゃないかな!”
ヨシコ
“文字絵というジャンルね!   えーと 葦手っていう手法があったわね”
クニオ
“葦手か〜 葦手はパズルみたいに大人の知的好奇心をくすぐるよね”

葦手下絵和漢朗詠集(太田切)(*5)

 10世紀末から11世紀前半に既存の和歌の歌意を描くという行為(歌絵)が活発化し,そうした歌絵は葦手(*3)と呼ばれる装飾的な文字を伴った遊戯的な側面も合わせて、時の貴族たちに享受され、以降の美術品に多くの影響を与えていった。(*4)
 
クニオ
“葦手って形の面白さを狙った大人の遊びっていうかな …… 知的遊戯性が魅了だよね”
ヨシコ
“そうね …… でもそれだけとは言えないわよ!  例えば、平家納経や久能寺経のように信仰に裏付けされた作品例もあるしね”




クニオ
“うーん そうか  ”  と少々落ち込むクニオ
ヨシコ
“でも大丈夫! 久能寺経などに描かれた葦手の意図は歌絵を表現しているし、知的遊戯性という遊び心の発露もあったんじゃないかな”
クニオ
“ (=¯▽¯=)V  ”
ヨシコ
“それから時代を経るとね、教養を前提とした作品も出てくるわよ”
クニオ
“フフッ   ”   



中世になると、葦手の手法はやまと絵的な風雅な趣向が色濃く表現された蒔絵などの漆工品の世界に受け継がれ(*2)、玄妙なる作品が数々登場する。

ヨシコ
“クニオさん〜どうぞ教養をが開陳ください!  ご相伴にあずかるわよ ”
クニオ
“サンキュー (⌒∇⌒)  例えば、秋野蒔絵手箱(*6)は源英明の歌を連想せせる趣向で、教養を前提とした表現になっているよね”
ヨシコ
“和漢朗詠集の「夏の日 関して 暑さを 避ける」を知っていなければ、解けないってことね”


クニオ
“そういう事だね!   それから春日山蒔絵硯箱(*7)はその格調高き精巧な蒔絵に藻を奪われがちだけど、文字に葦手の手法で隠されている   “
ヨシコ
“古今和歌集ね     ”


 二人の会話はさらにいつ果てることなく……。

文字(書)と絵のコラボレーションと言っていい文字絵表現には、遊びの精神が投影された作品が多くある、日本の美術の奥深さを見る思いがする。
この遊び心、お洒落な感覚、観る者を楽しませる表現を可能にする葦手という手法、ストーリー性のある絵巻物と共に、やまと絵は現代の漫画に繋がっていると云ってもいいのではないか。


(*1)ここでは絵の中に文字を隠すタイプの絵画
(*2)日本美術の核心  矢島新  ちくま書房
(*3) 葦手は装飾文様の一種で文字を絵画的に変形して葦、水鳥、岩などになぞらえて書いたもの。
(*4)特別展 やまと絵-受け継がれる王朝の美 2023年
  「やまと絵の成立と展開」 土屋貴裕
(*5)和漢朗詠集 巻下 太田切 伝藤原伊行(これゆき)筆 平安時代(11世紀)
  藤原公任(きんよう)が選集した四季など題目に合わせて漢詩や和歌が収まられている、本作は幕末に掛川藩の太田家が所蔵していたので太田切と呼ぶ
(*6)埼玉・遠山美術館蔵 鎌倉時代(13〜14世紀)
(*7)東京・根津美術館蔵 重文 室町時代(15世紀)

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2023年12月27日

平安の雅:やまと絵

平安の雅:やまと絵                        2023 12/27                

平安時代の絵画で思い浮かぶといえば絵巻物ではないだろうか。その中でも源氏物語を題材にした「源氏物語絵巻」は絵巻物の精華と言っていいだろう。

 晩秋の東京国立博物館にて特別展「やまと絵」(*1)が開催され、平安期の四代絵巻が展示されると聞き、二人は早速出かけることと相成った。


ワイワイがやがや …… ゾロゾロもぞもぞ …… ワクワクいらいら   
閉展を二日後に控えた祝日の博物館は人で溢れかえっていた。

クニオ
“鑑賞ベルトコンベヤーに乗るしかないね!”


鑑賞ベルトコンベヤーの速度は数cm/秒速ののろのろ運転、みんなイライラしてるだろうに、我々も含め何故か平然を装っている。

そうこうしているうちに観賞ベルトコンベヤーは「源氏物語絵巻」前に差し掛かかった。


ヨシコ
“夕霧の帖だけはじっくり鑑賞できました!”
クニオ
“詞書(ことばがき)(*2)だっけ  読めないけど「ひらがな」は美しかったね”
ヨシコ
“筆跡は勿論、紙や墨を含めてトータルで鑑賞されるものといった美意識があったのよ”
クニオ
“ほー 読まれることより美しく鑑賞に堪えると云うことか  ”


絵巻物の特徴の一つは、詞(ことば)を伴っていていること、この文字と絵画の総合体という形式にあるらしい(*3)、詞書は物語を生き生きと語ると同時に、紙料(*4)と呼ばれる用紙と共に美しさを際立たせる装置ともいえるのだ。



 ところで、源氏物語絵巻を代表とするやまと絵の誕生した平安時代は、当時の貴族社会の女性たちの文化的営みの発露である美意識が色濃く反映したという意味で、美術史上稀有な時代と言われている。(*5)
 
クニオ
“絵巻に映し出される世界は、女性たちにとっても魅力的に映っただろうね”
ヨシコ
“想像力たくましい貴族社会の女性たちの想像力をさらに掻き立てたことは間違いない”
クニオ
“例えば、王朝の色を際立たせた女房装束(襲)は女性の感性の賜物だね”
ヨシコ
“かな文字(*6)の広がりも背景としてあるんだと思うな”
クニオ
“かな文字の普及で最も恩恵を受けたのは貴族社会の女性と言われれているね”



後ろ髪を引かれる思いで東京国立博物館を後にしたが、胸の内には伴大納言絵巻、信貴山縁起絵巻、鳥獣戯画を改めてじっくり見てみたいという思いが広がっていた。

 日本伝統美術の一翼を担う「やまと絵」を堪能できた一日だった  合掌!
 

(*1)特別展 やまと絵-受け継がれる王朝の美  東京国立博物館にて開催
四代絵巻、三大装飾経、神護寺三像などおなじみの作品が一挙に集結
(*2)詞書
絵巻物の絵に添えられる説明文
(*3)日本美術の核心  矢島新  ちくま書房
(*4) 紙料  特別展・やまと絵  記念冊子より
文書や経典等の文字を書くときに使用する紙。
平安時代には和歌や物語にふさわしい優雅で繊細、趣のある紙が求められた。型文様を施した雲母刷りの唐紙、蝶や鳥の下絵や透き藻模様の様々な衣意匠を施した紙料が登場し装飾資料と呼ばれた。
(*5)平安の美(絵画・書・工芸) 泉武夫 
(*6)かな文字 日本美術史入門 河野元昭 平凡社
九世紀末に漢字の草書体から生まれた仮名が完成し、そのしなやかな字形が言葉のリズムと直結した優美なちらし書きを生む。


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2023年11月27日

王朝の色に挑む

王朝の色に挑む             

クニオ
“鮮やかにして冴えざえ!”
ヨシコ
“気高くして優美な美しさ!”

そのまばゆい色彩に魅了され二人は、いつになく上気した気分に包まれている。



「王朝の色に挑む」は「染司よしおか」が、すでに失われてしまった自然の染料による伝統の色の再現に挑み、あくなき探求心と情熱によりよみがえらせ、(*1)ここ岡崎市立美術博物館にて開催された。

清少納言や紫式部が登場した王朝文化の華やかな平安中期(10世紀〜11世紀)頃に、女房の装束のいわゆる「十二単」(*2)が誕生したと言われている。
十二単は袿(うちぎ)(*3)と呼ばれる複数の衣を重ねることが基本、色や袷(あわせ)(*4)の衣服の表地と裏地の色の組み合わせを襲(かさね)と呼んだ。

女房装束

俳人・詩人の安藤次男(*5)によると、日本人の色彩感覚の基本が「重ねる」=色の組み合わせ(色目)にあるらしい。

重ねの代表的なものに「襲」の色目がある、会場では「染司よしおか」が見立てた初夏の彩りとして「夕顔の襲」が春の彩りとして「藤の襲」が展示されていた。

「染司よしおか」5代目当主の吉岡幸雄は「夕顔の襲」を「中央の黄色は夕顔の花心を見せ、やや濃い緑の葉を背に白く咲く花は、夕暮れの風と共に涼なる心地がする」(*6)と思いを寄せている。

夕顔の襲

藤の襲
クニオ
“原色のように生な色をそのまま見せることを良しとしない王朝の美意識って何だろう”
ヨシコ
“色を重ねて行くことで、色が「うつろう」という感覚があるんじゃない”
クニオ
“なるほど、「うつろう」は移り変わるってことだよね、その変化が色の深みを増す”

ヨシコ
“えーと、色を何層にも重ねることで、色が美しく映りあうってこともあるわよね”
クニオ
“単色では得られない色の深まり、「重ね」の魅力の一つだよね”

色を重ねるという美意識は十二単の華やかな装束を生み出したが、その美意識の深まりは、王朝人をして、単色を愛でることだけでは飽き足らず、透かすして見る・見せるという感覚を触発せずにはおかなかった。

 例えば、源氏物語の夕顔では
「この家のかたはらに、檜垣といふもの新しうして、上は半蔀四五間ばかり上げわたして、簾などもいと白う涼しげなるに、をかしき額つきの透き影、あまた見えて覗く」(*7)という光景が描かれている。
ヨシコ
“光源氏が夕顔を蔀(しとみ)越しに見初める光景を描いているね”
クニオ
“蔀越しに、美しい様子の女房のシルエットが、たくさん透いて見えてこちらを覗いているって光景”
ヨシコ
“生(き)のままでは野暮、霞が掛かっている方が美し ( ゚ー゚)( 。_。)ウン♪ てことね”


 原色のように生な色をそのまま見せることを良しとしない美意識は、日本人に通底奏音のごとく横たわる美意識の芽生えかも……。

几帳

(*1)「王朝の色に挑む 」パンフレットより抜粋  岡崎市美術博物館
(*2)十二単という名称は、文献上女房装束(にょうぼうしょうぞく)、裳唐衣(もからぎぬ)等と呼ばれていた装束の後世の俗称。
(*3)最盛期には十数枚重ね着されたが、平安時代末期から5枚に落ち着いた。
(*4)袷とは、裏地のある長着のこと、これに対して裏地のないものは単(ひとえ)と呼ばれる。   (*3)(*4 )出典:ウイキペディア
(*5) 安藤次男 1919年〜2002年 俳人・詩人・評論家
「重ねる」のくだり……日本の色 大岡信編 朝日選書
(*6)日本の色を知る 吉岡幸雄 角川ソフィア文庫
(*7) 訳
この家の隣に、檜垣という檜で作った垣根を新しく作って、上の方は半蔀を四、五間(けん)ほどずらりと吊り上げて、簾などもとても白く涼しそうな所に、美しい額の様子のシルエットが、たくさん見えてこちらを覗く。
(*8)透き影 薄い物や物のすきまをとおして漏れる光

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2023年10月25日

魅惑の館

魅惑の館

青葉の上を吹き渡ってくる緑風が心地よい、東京にいることを忘れさせる。

 東京に降り立った目的の魅惑の館は、広々とした庭園の先にあった、魅惑の館とはアール・デコの粋を集めた建築と評される旧朝香宮邸(*1)のことだ。
 


ヨシコ
“アール・デコの館にしては、装飾性に乏しく、シンプルな表現ね!”
クニオに
“でも、列柱が古典を、縦長の窓が新しい時代=インターナショナルスタイルを暗示しているとおもわない?”


 確かに外観はシンプルな印象を与える、これは全体の設計監理を宮内省が行ったことが影響しているかもしれない。
 アール・デコはフランスを発祥としアメリカで花開いた、マンハッタンのスカイスクレーパーはその象徴だ。
20世紀初頭の大量生産・大量消費の時代の気分を表し、特にニューヨークはアール・デコ建築の都市と言ってもいいだろう。

旧朝香宮邸はフランスのアール・デコの香りをプンプンとさせる、キュビズムからシューレリアリズムに至る20世紀の前衛的な芸術を吸収してソフィスティケートさせた役割を果たしたアールデコ(*2)の香り  がである。
 
 
では、アールデコの美学でまとめ上げられた旧朝香宮邸の内部に踏み入ってみよう。


正面玄関では、ルネ・ラリック(*3)がデザインした有翼の女性像をモチーフとしたガラスレリーフ扉が訪問客を出迎えてくれる。
ヨシコ
“素敵! 女性の輝きや聡明さを表現しているわね”
クニオ
“20世紀初頭は様々な分野で女性の才能が開花したる時代、有翼の女性像はそんな時代の気分を表しているかもね!



大広間から左に視線を向けると、黒い台座に咲く白色の香水塔と呼ばれる噴水機が人目を惹く。
モザイクタイルで幾何学的な模様が施された床、柱の黒と人造石の壁の朱色のコントラスト、三段の掛子と浮遊感のある天井……アール・デコ調の華やかな装いをまとった空間だ。
…… 香水塔の香りが客を饒舌にさせ、その後のおもてなしに期待を膨らませたことだろう。

クニオ
“いやー アール・デコ特有の華やかさと気品があっていいね!”
ヨシコ
“香水塔って巨大な生け花のオブジェかと思ったわ (o^ ^o) / ”
クニオ
“確かに ラパン(*4)もモチーフにしたかも! |* ̄ー ̄|  ”


さて、続いて旧朝香宮邸で最も濃密なアール・デコの世界が堪能できる大客室へ。


長い縦窓はハッとするほど高く天井まで達していて優雅だ、その窓からの外光に照らし出された大客室は荘厳でさえある。
 シャンデリアもエッチング・ガラスをはめ込んだ扉も格子の枠の壁もイオニア式の柱頭(黒檀だそうです)のある付け柱も素敵だけど   それらが織りなす空間はなぜか不思議な世界に観えた。

俗と幽玄は紙一重 …… しばし食い入る様に眺めていると……



その恍惚としたしじまが突然裂けた
“お客様、お客様 息を吹きかけないでください  !”
どうもエッチング・ガラスの扉を食い入る様に眺める姿に不安を覚えた係員が口を尖らせたようだ。

ヨシコ
“顔、くっつけすぎ!”
クニオ
“(;´∀`)   ”






*1)現 東京都庭園美術館 
朝香宮鳩彦王(あさかのみや やすひこおう)夫婦がアール・デコ博覧会に強い影響を受けて建てた邸宅。戦後、外務大臣、首相公邸、迎賓館を経て、1981年に東京都庭園美術館として公開された。
*2)アール・デコ
 1910年代から30年にかけてフランスを中心としてヨーロッパを席捲した、ファッション・工芸・建築などの分野に普及した装飾様式の総称。
*3)ルネ・ラリック 1860〜1945
19世紀から20世紀のフランスのガラス工芸家、金細工師、宝飾デザイナー。アール・ヌーヴォーとアール・デコの両時代にわたって活躍。
*4)アンリ・ラパン 1873〜193
フランスの室内装飾家、デザイナー、香水塔の他大広間、大客室、次室などの内装デザインを手がけた。

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2023年08月24日

「魂の貧困」を憂える

「魂の貧困」を憂える

福島の処理水を8月24日に放出するらしい。
自ら起こした不始末の処理を、自らの責任で解決しようとせず、人類の公共財である太平洋に流すなどという愚行を行うことに、東電の、日本政府の、日本人の「魂の貧困」を覚える。
2023年8月24日は、日本人としての矜持、誇りを無残にドブに捨てた日として記憶され、記録されるだろう。
 私は、一人の日本人として、この愚行を恥じ、抗議し、反対する。


私の考える「自らの責任で解決する処理方法」

敷地内の汚染水が満杯で溢れるなどと泣き言を言わず。
トリチウムの放射線半減期が約12年であることを考慮し。

少なくとも60年後(12年ごとに半減を繰り返せば、60年経たトリチウムの線量は1/32となる)、
できれば120年後(120年経たトリチウムの線量は1/1024となる)

から放出することが、誰にも迷惑のかからない、本来あるべき解決策だと思う。


  

2023年08月16日

Steve Jobs Japan 

Steve Jobs Japan           2023 08/15

「スティーブ・ジョブズ マックを生んだ日本の版画との出会い」(*1)

「スティーブ・ジョブズの日本での経験が、彼の人生にとってどれだけ重要だったかのか……」のナレーションから始まるNHK番組の興味深い話題が今日のお話。

このマックを生んだ日本の版画とは新版画のこと。大正~昭和の前期にかけて、浮世絵の伝統を継承し「新しい時代の浮世絵」創出を目指し、浮世絵のエセンスに西洋の技法を取り入れた新しい版画の潮流が新版画である。(*2)

ヨシコ
“マック誕生に日本の版画が影響したなんて、なんかうれしいわね!”
クニオ
“新版画との遭遇が友人宅っていうのも好感が持てるね、能動的でなくて、たまたまってのがいいな~ 偶然の遭遇で眠っていた彼の審美眼が目覚めた!なんて 愉快だよね!”

友人宅でスティーブ・ジョブズ(以降SJと表記)の心を射止めた新版画は「日光街道:(*3)」という題名の風景画。

 
ヨシコ
“林立する杉、遠近法で描かれた街道、緑のグラデーション、光と影のコントラスト……   素敵な風景画ね、私も魅了されちゃった!”
クニオ
”落ち着き、静けさ、そして気品を感じる風景画だよね! (⌒ω⌒) ”

しかし、SJと日本の接点が新版画とは、かなり興味深い話ではないか。


彼の寝室にはアインシュタイン、ガンジーと共に「朝寝顔」(*4)が飾られていたし、勝負をかけたマックのアイコンには、浴衣姿の女性を描いた「髪梳ける女」(*5)を使用した。

ヨシコ
“なんでSJは、この美人画の女性像に魅了されたんだろう?”
クニオ
“B・ルドルフスキー(*6)の日本女性に対する印象が、欧米人の視点として参考になるかもしてないよ”

と言うのも、B・ルドフフスキーは、日本文化に対する刺激的にしてユニークな視点をもつ著書「キモノ・マインド」にて、着物姿の女性の、それも「仕草さ」が醸し出す風情を絶賛していた。

クニオ
“思うに、SJは美人画の、ミステリアスな雰囲気に、えも言われぬ何か怪しい魅力を感じとっているのかもしれないね”
ヨシコ
“私は、その怪しい魅力は、仕草さが醸し出すもので、「いき」に通じるものがあると思うんだ、…… そうだな、えーと …… 「なまめかしさ」「つやっぽさ」「物憂げさ」って女性の「いき」な仕草さだと思うな(*7)”

「朝寝顔」では、枕に頬杖をついて何事か思案にふけっている仕草さに。
「髪梳ける女」では、寝間着姿で長い髪を梳う女性の仕草さに。



そこはかとない、けだるさと、なまめかし、物憂げな仕草に「いき」な魅力を直観的に感じ取ったのか?

クニオ
”欧米人にとっても、着物姿の女性の「いき」な仕草さは、大いに魅力的なんだよ、きっと”
ヨシコ
“私もそう思うわ! ”
クニオ
“ちょっと強引だけど、当たらずといえども遠からず! ”


(*1) スティーブ・ジョブズ マックを生んだ日本の版画との出会い」
NHK BS 2023年5月23日放送
(*2)「浮世絵の歴史」 小林忠 美術出版社
(*3)「日光街道」川瀬巴水 版画家(1883~1957)
日本画と洋画を学び鏑木清方に師事し、風景画に優れ、新版画の代表的な作家(*2)
(*4)「朝寝顔」 橋口五葉 版画家(1880~1921)
当世風俗を写した独自の端正な美人画様式の版画を世に送り出した、浮世絵研究家としても有名。(*2)
(*5)「髪梳ける女」鳥居言人(ことんど)日本画家/版画家 (1900~1976)
鏑木清方に師事、木版画を試みたのは昭和初期の数年間(*2)
(*6)「キモノ・マインド」  B・ルドルフスキー(米国人・建築家) SD選書
着物姿の歩きっぷりこそ世界で最もセックスアピールのするもの ……  これにくらべたら我々の水着美人コンテストなんて幼稚園のお遊びである……。
(*7)「日本美を哲学する/あわれ・幽玄・さび・いき」 田中久文 青土社

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Posted by pasarela at 18:39Comments(0)●徒然に思う

2023年07月08日

過剰繋がり 若冲とスーラ

過剰 若冲とスーラ          2023 7/8

ヨシコ
“ユーモラスだけど不思議な色感、新鮮な驚きを抱くわね!”
クニオ
“僕の印象は過剰さかな……過剰な丹念さ!”




ここは掛川市二の丸美術館。
開催中の「若冲の魅力-花と鳥展の展示作品から」、伊藤若冲の「樹花鳥獣図屏風(高精細複製図:静岡県立美術館蔵)」(*1)を前にしたギャラリートークの一幕。

 「樹花鳥獣図屏風」は動物と鳥が「枡目描き」という画法で描かれていて、ちょっと奇想天外な絵ではあるけれど、ヨシコさんの感想のように新鮮な驚きを抱く。
枡目描きは、1㎝四方の枡目(枡目の数は116、0000個)、一つ一つに彩色する、それも一色でなくて重ね塗りをする描き方。


この時、クニオは、脳裏にジョルジュ・スーラ(*2)を思い浮かべていた、新印象派の画家で点描画法をつくり上げた、あのスーラだ。


クニオ
“樹花鳥獣図屏風を観た時、スーラの「グランド・ジョット島の日曜日の午後」が脳裏をかすめたよ”
ヨシコ
“アラー 洋画も興味があったんだ?”
クニオ
“あまり知識はないけど、細かな色の点を画面に配置する点描画法と似てるなと思ったわけさ”
ヨシコ
“そうね 色を置いて描くという点では似ているかもね、どちらもきっと気の通くなるような作業の積み重ねが必要ね”
クニオ
“そうだね、どちらも色の配分、幾何学的な構図に合理的なアプローチを感じるね”
ヨシコ
“でも出来上がった絵の印象は随分と違うんじゃない”
クニオ
“確かに「樹花鳥獣図屏風」は奇想天外(*3)にして少々幻想的にして過剰な表現、方や「グランド・ジョット島の日曜日の午後」は時の流れが止まったような過剰な静けさの中にある世界だよね”
ヨシコ
“ほんとね 若冲の描く鳥や花は異次元の世界から降り立ったような過剰な気配を漂わせているわね”
クニオ
“過剰な静けさと、過剰な気配 …… って”
ヨシコ
“「過剰」つながりね”

クニオ
“ちょっと強引  (灬ºωº灬)♡ ”

ところで若冲と蕪村、応挙、大雅、芦雪がご近所さんだことを知りびっくり、街中で会えば“おきばりやす”とか“おおきに”とか言っていたのだろうか?


注)樹花鳥獣図屏風は二の丸美術館の許可を得て撮影
 
(*1)この作品と大変よく似た絵に「鳥獣花木図屏風」(出光美術館)がある。
(*2)ジョルジュ・スーラ(1859-1891)
フランスの画家で新印象派の創設者、光学理論に導かれて科学者のような研究を重ね、細かの色点を画面に配分する点描画法をつくり上げた。
「グランド・ジョット島の日曜日の午後」・「ア二エールの水浴」がある
(*3)
「奇想天外より来る」天から舞い降りたような奇抜な発想のこと 
出典:ミヤコに奇想横溢(おういつ)18世紀京都画壇:辻惟雄
  日本美術全集14 江戸時代Ⅲ 小学館

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Posted by pasarela at 22:34Comments(0)

2023年06月04日

花明かり 「醍醐」

花明かり 「醍醐」

ヨシコ
“ワォー 「桜」尽くし  桜の饗宴ね!”

そこかしこに「桜」が華やかさを競っている。
山種美術館・「富士と桜」展の桜の咲くコーナーは桜でいっぱい、桜が“観て!観て!”と語り掛けてくる

 

ヨシコ
“でも、「醍醐」(*1)は不思議な明るさね……薄いベールを透かして明かりがこぼれるような!”
クニオ
“そうだね、桜って「はかなく、一瞬の輝きに豪華絢爛さを競う」って感覚が強いけど、「醍醐」はちょっと違うかなって感じるね”

確かに「醍醐」は陽光の下で、咲き誇るって感じではなく、桜の花自身が放つオーラ(花明かり)がほのかな明りとなり、画全体が薄いベールで包まれたような感覚を覚える。
……穏やかに、澄んだ風情と言っていいかもしれない。


ヨシコ
“えーと!  確かに「穏やかに、澄んだ風情」なんだろうけど …… でも私には、薄絹を透過した、ほのかな光が満る表情 …… 素朴さとか清楚な美しさとか そんな風に感じるわ”
クニオ
“そういえば 確かえーと ほのかな光って「漆の艶の特徴」(*2)だって聞いたことがあるな”

少し考え込むクニオ


出典:「富士と桜」展のパンフレットより

クニオ
“それって「葆光!」だよね   桜・幹・土塀が葆光で満たされている!”
ヨシコ
“でも、本来、葆光は光を包み隠して、暗闇が、ぼんやりと、あいまいな光に満ちた様を言うんじゃない?“
クニオ
“僕には、絵の背景は暗闇に包まれているって感じるんだけど  だから土塀の桜だけがほのかな光に包まれている”
ヨシコ
“そう云えば 確かに!”

葆光は包まれた光、ほのかに内にこもる光という意味がある。
一方、人間の智が到達した絶対の境地という意味から=優れた知恵・才能を隠して表面にあらわさないことに例える。*(2)……とある。


ヨシコ
“だとすると、土牛は日本画の高みに達したってことかな”
クニオ
“うーん~ ” いずれにしても、傑作の一つであることは間違いない。


─今年も醍醐を訪れ、昔と少しも変わらぬ美しさがあり、醍醐の花見の宴などを思い、写実を離れて、象徴的な桜を表現しようとして描いた─とは土牛の言葉。*(3)
 


クニオ
“ヨシコさん、あなたにも葆光に例える優れた知恵・才能があればご披露ください”
ヨシコ
“へそくり  かな”
クニオ
“(○´・ω・`)bOK! ラジャー”

二人は周囲の迷惑を顧みず、ワイワイと境地がなんであるかの持論を述べるのであった。

アンタ、ここは美術館ですから!  残念!!  懐かしい波田陽区です。


(*1)醍醐 奥村土牛(1889年2月18日-1990年9月25日)
現代日本の代表的な日本画家の一人。本名:奥村 義三(おくむら よしぞう)
醍醐:制作年1972年、京都醍醐寺のしだれ桜を描いた作品で、奥村土牛の代表作の一つ。
 恩師小林古径の七回忌法要の帰り道に、醍醐寺の三方院に立ち寄り、土塀の前のしだれ桜をスケッチ。  山種美術館

(*2)葆光 輪島屋善仁(わじまやぜんに)  輪島屋善仁 | Facebook
(*3)日本美術院百年誌 再興第57回院展より
鈴木進 三彩293号


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Posted by pasarela at 20:26Comments(0)●徒然に思う