2019年06月03日

貫の再発見 

貫の再発見 

 明治期以前の木造建築は、地震などの水平力に対して主として柱の曲げ抵抗に頼り、変形に対しては、土壁や厚板が変形しないように踏ん張る、いわゆる土壁や厚板の剪断力で抵抗してきました。
 
 1995年頃から日本は高度成長期の時代に突入したが、そこでは、地方圏から大都市圏への大量の人口移動が生じ、そのため、住居を短期間・大量に建設する必要に迫られて、生産と構造の省力化はその図られた。

 乾式工法や斜材である筋交いを抵抗要素とする軸組工法が一気に普及したのはこの時期、筋交い構造は、筋交いの圧縮力(又は引張力)などの軸力で踏ん張る軸力系だ。

 木造の耐震構造は曲げ系、剪断系、軸力系は構造の3つの基本形からなり、戦後主流となった在来工法で主役の筋交い構造といえども、通し貫や差し鴨居、足固めなどの柱を横に繋ぐ材は耐震構造に不可欠なプレーヤーである。
 
 にも関わらず、構造と生産の省力化の過程で、日本の伝統的構法の大事な約束事を疎かにし、柱を横に繋ぐ足固めや、差し鴨居を追放してしまった。

貫の再発見 
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 常に日本の伝統的構法の優位性を唱えてきた構造設計家の増田一眞氏は
  「いまや、伝統の組み手や通し貫の基本的手法さえ知らないで木組みと称して、すべて金物と接着剤だけに頼る大工が増えてしまった。」と
   現状を憂いつつも、建築木造構造の軌道修正を訴え続けている。
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在来工法の架構、垂直材が大半
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伝統的構法の架構、水平部材が多段状に通り、すべての柱が一体に結合されている。



 13世紀の初め、俊乗坊重源が大陸より大仏様(を使い軸部を固める)という構法を日本に伝えて以来、約千年弱、大仏様はその豪放な構造から日本では受け入れがたく、浄土寺や東大寺の南大門にその姿を残すのみであるが、の有効性は捨てがたく和様に取り入れられて現在に至る。


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