2019年09月13日

土から始まる 版築の魅力 

土から始まる 版築の魅力  

 
近年、版築が注目されているという、どうしてだろう。

 土は最も手軽に手に入る建設材料、その工法は気候風土や文化的背景により多種多様です、世界の建造物の中で、土の建築は3割程度を占めるといわれています。
 さらに土は、自然素材で役割を終えても環境に負荷を与えません、まさに土に還るのです。

 僕たちが土に対峙したとき、意識に深く訴える力、エネルギーを感じる事があります、心地よいリズムを感じるのです。

 特に厚い土の壁となる版築は、その迫力とともに、僕たちは心地よいリズム、すなわち土の鼓動を感じるのです、この鼓動が心にやすらぎを与えるのだと思う。

 今回厚さ5cmの版築でアポローチの壁を構成、緩やかに湾曲する壁に導かれて玄関に至る、土の洞窟の奥に踏みいるという設定です。

湾曲する版築壁の向こうに入り口(入り口の板戸は仮の戸)


版築のテクスチャー

足下

 *版築とは、土を型枠に入れ、上から突き固めて5~6割程度に圧縮した層を積み重ねる構法のこと。
  

2019年08月10日

第7回”ボチボチ始める家づくり学校”

第7回”ボチボチ始める家づくり学校”

 ここ数年”ボチボチ始める家づくり学校”と称して「人と住まいの幸せな関係」についての勉強会を開催してきました。
 第7回”ボチボチ始める家づくり学校”のテーマは昨年同様「資産になる家をつくろう」です。

 「人と住まいの幸せな関係」ってなんだろうと思ったとき……
 家づくりは、やはり長いスパンで考えることが肝要で、TVの素敵おな住まい拝見のように、あまりも個性的な住まいは、寿命が短い傾向にあり、普遍性が価値の根元ならば資産価値を減じやすいのでお薦めできませ、すなわち「人と住まいの幸せな関係」を阻害する可能性がありますね。
 
 子供と一緒に過ごす時間でさえ6~8年程度、長い一生を考えれば短い時間といわざるを得ない、今に重きを置くのではなく老後も含めた姿を考慮すれば、住まいは、普遍的(ロングライフデザイン)なデザインであるべきと思うが」いかがだろうか。

 建築主・施工者(各職方)・設計者のチーム力を発揮してつくり上げることが基本です、チームの各人が”仕事に対等且つフェアであり、互いに信頼し、同じ目標を目めざし、成果を分かち合う”という意識がなければ「人と住まいの幸せな関係」=「資産になる家」はつくれないと思っています。

 私たちが提案する、「資産になる家」の設計原則は以下の通りです。

”普遍的なデザイン”
”環境負荷の低い構法でつくる”
”触れる・身近な材料(自然素材)でつくる”
”十分は性能を組み込む”
”原価率が高い”
       の5つです。

 第7回”ボチボチ始める家づくり学校”のテーマは「質の高い住まいをつくろう」では、この5原則についての話が中心となります。

 又、地域型住宅グリーン事業など魅力的な補助金制度の紹介も合わせて行いたいと思います。






日時 2019年9月1日(日) 13:30~15:00 
場所 20世紀の丘公園(たまりーな)
募集   5家族・個人   参加費 1,000円/一家族・個人 /Coffee付
参加申込み 掛川の風景をつくる会  清水建築工房一級建築士事務所(清水)
     TEL/fax 0537-27-0576 携帯 090-6070-1091
    e-mail info@shimizu-arc.jp
     掛川の風景をつくる会FBページ より

□当日スケジュール
13:30~14:15「資産になる家をつくろう」
14:15~14:30   休息   
14:30~15:00 地域型住宅グリーン事業などの補助金・助成金制度説明
  

2019年06月25日

ヒガキとモミジ

ヒガキとモミジ

 ヒガキとは、荒壁に刻んだコテ跡のこと、土の乾燥の促進と中塗り土が荒壁の肌に馴染みやすく(つきやすくする)とも云われているが。


 しかし一方、このリズミカルに刻まれたヒガキを目にしたとき、左官職人の手仕事の心意気を感じとれるのは、一人私だけではないと思うがいかがだろうか。


 
 モミジは、その鮮やかな紅葉の代表格だ、左官壁はそのモミジを写し取る事もできる。
壁に写し取られたモミジといえども、時間と共に風化して壁の中に消えていく。




 写真の写し取られたモミジは、早晩、壁の中に隠れてしまう運命にあるが、この建物が使命を全うしたとき、壁の中から現れるかもしれない、左官仕事はそんなロマンが隠されている。
  

2019年05月16日

竹小舞を掻く

竹小舞を掻く


西面

 藁縄は石川県のあわら市産。


光が透けて魅了的、土を塗るのがもったいない?


北面

南面

縦竹の土台部分、土の重みで縦が下がるので、縦竹の端部は浮かしておく。  

2019年04月16日

仮組

仮組

 本番の建前に先立ち、軸組や小屋組を事前に組み立てることを仮組と云うんだけど、久しぶりの仮組に立ち会った。

 仮組の目的は、継ぎ手や仕口の刻みの確認と修正を目的に行います。

 M事務所の建前は4月18日~20日で予定されているが、この仮組は2週間ほど前に行った時のも。

 設計当初、太鼓梁は中引きと棟木の4本の予定でしたが、大工がストックしていた丸太も使う事になり、先の中引きと棟木の他に梁と荷持ち材も太鼓梁となった。
 
 そのため、中引きや梁も当初の寸面より大きくなり、桁など製材とのバランスを保つために、敷梁を原木市場の土場に積まれていた6寸幅で成が一尺の材(割とリーズナブルだった)を使う事にした。

 大工さんも張り切っている、建前が待ち遠しい。







墨がピッタリ
  

2017年11月24日

ソロリソロリ「土の隠れ家」つくり 

ソロリソロリ「土の隠れ家」つくり 

 なかなか進まぬ「土の隠れ家」、ソロリソロリと亀のごとく。
当初の計画通りだと本日11月23日は「土塗り」のはず、思うに任せぬは世の常とは言え、竹小舞いがこれほど進まぬとは、いわゆる想定外。
 想定外といえば、これほど参加者が少ない事も想定していなかった。

 ”いや、いや!”ただ、ただ、計画の甘さが露呈したに過ぎないことではあるが、少し寂しい。

 で、本日は、雨にたたられ午後からとなった、僕と惨状を見かねた助っ人の二人で竹子舞のえつり作業を行うも、見た目の進捗状況は芳しくなく、山の帳は早く16:00で終了。







 次回は12月10日(日)、僕を含め3名で作業予定。
参加者募集してます。

  

2017年06月13日

最新建築が伝統建築に近づく

最新建築が伝統建築に近づく

 下の画像は「空調も換気も断熱材も無いミニマムエネルギー・オフィスビル」と日経アーキテクチュア紙に紹介された「Baumschlager Eberle」という設計事務所のヘッドオフィスのブロック造のビル。


 この一見何の変哲もないブロック造のオフィスを、なぜ取り上げたか。

 ”この建物は、建築家自らが長年興味を抱いてきた点、
(1)年間を通して室内を快適に保つため、躯体自体の断熱性能と蓄熱性能を高め、内部発熱(人、機器、照明など)のみで暖房を賄う。
(2)冷房・換気は開閉可能な窓だけで賄う。

 といった試みを行った結果

”建物のたたずまいや構造のあり方などは、アルトバウ(Altbau=古い建物)と呼ばれるドイツの古い建物に近づいている。”

 と設計者がコメントしている点に興味を覚えたからだ。

■断熱材を使わずに断熱

 驚いた事に、このオフィスビルの第一の特徴は断熱材を使わずに高い断熱性能を有しているようだ。

”どういうこと?”と誰もが思われるだろう。

 答えは、オフィスビルを構成しているブロックにあった、空気層のある断熱ブロックを使う事で、オフィスビルの高断熱化(U値=0.41)を実現していた。

 断熱材は微細な空気層がを無数存在する方が性能が高い、気体は熱を伝えにくい(気体での熱の移動は対流が原因、なので、動かない空気が存在すると断熱性能が高まる)点にヒントを得たようだ。

建物の名前も2226とユニークだ
”室内の快適温度の範囲を意味する。暖房や冷房を使用せず、また躯体に比べて寿命の短い断熱材も一切使用せず、構造体だけで年間を通して室温22℃から26℃を維持するという意思”を表して命名したそうだ。

さらに興味深い事は
”断熱材を使わずに断熱とか、石油・発泡系断熱材の利用低減、リサイクル可能な材料の採用など、省エネ対策だけでなく、建築を構成する建材そのものの環境性能に意識がいっていることや、想定建物寿命を100〜150年にしている、その結果、現代建築が古い石造建築に通じるものに回帰した”と述べている点にある。

■最新建築が伝統建築に近づく

 日本では、ほんの70年ほど前までは、地球環境とかサステイナブルとかグローバルな理念を振りかざさなくても、当たり前のことで、それを支える構法や技術は存在した。
 
 近代の建築は、機能性や合理性を理念に掲げ、科学技術をあまりにも信奉するあまり、近代以前の構法や技術、材料を軽視してきた嫌いがある。

  地球環境とかサステイナブルなどのグローバルな理念を旗印にしたとき”建物のたたずまいや構造のあり方などが、古い建物に近づく”とは愉快なことだ。

 でも、そこに気が付いたときには”それを支える仕組みや職人がすでに散在しない”なんてこともあり得る点が気がかり。

  

2017年06月11日

「山から始まる家づくり」その五・ ”竈でご飯を炊こう”

「山から始まる家づくり」その五・ ”竈でご飯を炊こう”

「山から始まる家づくり」シリーズ第5弾は、「竈作りと竈でご飯を炊いて食べよう」体験です。
前回の「山始まる家づくりツアーの第4弾」は
 竹小舞い掻き+土壁塗りの体験を通じて、近年馴染みが薄い土壁の家に付いて、土壁の良いところをあれこれ上げて、”土壁の家を増やそう”を叫んでみた。


 第5弾は、前回に続き、土で作る竈の体験イベントを通じて、土壁の家に関心を持ってもらおうという企画。

 竈には土を突き固めたものと石積みの竈がある、どちらかというと土の竈のほうが古いらしい、地域により”かまど””ヘッツイ””くど”と呼ばれていて、絵巻物にも描かれている。






 竈は南向きに作られるものと決まっていて、土間の入り口の方を向いていて、ヘッツイやさんに頼んで作っていもらったそうだ。

 我々の食の良き友だった竈は、台所の近代化とともに姿を消してしまったが、コンパクトに持ち運び可能なヘッツイとして再登場している。
 

 土壁は、防火性、遮音性、蓄熱性、吸放湿性、空気質、展伸性、可塑性など、建築関係者が後生大事にする建材なんぞ、足下にも及ばないほど優れた性質を持っている。
 今は評価の低い土壁ですが、時間と共に味わい深く変化していく材料の代表格である土、木材の無垢板とともに再評価される時が来ていると思っているがどうだろう。

 そんな訳で6月25日(日)、”竈作り+竈でご飯を炊く+竈を囲んでご飯を食べる”体験会を開催します。
6月は五月雨の季節、うっとおしい時期ですが、一方大地を潤し、草木のとっては恵みの雨でもありますね。
 そんなわけで、時ノ寿の森で、皆さんお待ちしています。
  

2017年04月19日

竹小舞い+土壁塗り体験を企画した理由 その2 

竹小舞い+土壁塗り体験を企画した理由 その2  

 始まる家づくりのシリーズの第4弾は、竹小舞い+土壁塗り体験のイベントです。

 ■企画した背景、その2

 住まいなど暮らしの場を造る行為を、すまい手自身が、もっと身近に感じたい、より自由に楽しく関わりたいという欲求が高まりつつあることがある。

 時代が昔に戻って恐縮ですが、ほんの半世紀ほど前の住まいの壁は素人も参加した。
 
”そう!” 
 竹子小舞いを掻き、荒壁土を小舞いに掛ける、或いは泥団子にして小舞いに投げつける。


 出典 CONFORT6月号別冊 土と左官の本  建築資料研究社

”何か、楽しそうじゃないですか、笑顔がいいね。”


 もう廃刊になったけれど、彼の月刊「左官教室」の編集長だった小林澄夫氏によると。

 「土蔵の泥や荒壁打ちは、施主の親類縁者や土地の人々が、女子供から老人まっで集まって、吉日を選び、一日で行われ、終われば鍋を囲み、酒を芋煮でで無礼講となる、振る舞い酒は、通りすがりの見物人にも振る舞われた。」…中略…このような人々が集まる開かれた場に祭りがあり、すべての人々に祝福された……」土と左官の本:建築資料研究社

 
 どうです「見て触れ、感じたい、土を塗って見たい」という思いに突き動かされませんか。



 これまでの家づくりと言えば、誰かが作ったものを購入(消費する)したり、注文したりしているだけ、自分で手を下す機会はほとんど無し。

 例えば、お祭り、事前準備から参加すると、当日の祭りの風景も違って見える、外から見物するのとでは天と地、めんどくさいけど充実感はある。

 安全の為、致し方ないが、今建てようとする住まいは、足場と幕で目隠しされてしまい、閉ざされた中で造られる、そんなのつまらないと言う感覚の持ち主、参加あれ!
  

2017年04月11日

”里の蔵 荒壁の掛ける 小舞い竹”  

”里の蔵 荒壁の掛ける 小舞い竹”  

3月下旬に、来る5月28日の「竹小舞い+土壁塗り体験」準備で真竹を伐採した。

”エー!3月って竹の伐り旬じゃないでしょう”とツコマレそうだけど、割竹のストックもないし、購入するのももったいない、体験用だからこれで十分でしょう。





 ところで最近、ダウンタウン浜田MCの番組「プレバト」をよく見る、なかでも、俳句コーナーは秀悦で、自然の風景や人物のいる光景を、5・7・5の17音で季節感や暮らしを、季語を駆使し、細やかな情感で表現する俳句、さらに夏井先生のだめだしを楽しく見ている。

 秋の季語に「竹の春」がある、筍が目を出す頃は、筍に栄養を補給しなければならないため竹は衰える、でも、秋になると生気を取り戻して青々と茂る、この様を「竹の春」という。
 だから、勢いのある秋に伐採した方が、虫も付かないし、柔軟性もあり、長持ちもする。

 ちなみに、竹の様を感じ取った春の季語は「竹の秋」と言うらしい。

 で、ダウンタウン浜田MCの番組「プレバト」の俳句コーナーで、土や竹をお題煮にしてほしいね、例えば……

”土壁のある里山の風景を見て一句”

 ”里の蔵 荒壁の掛ける 小舞い竹


 5月28日(日)「竹小舞い+土壁塗り体験」、 時ノ寿の森でお待ちしてます。