2018年10月05日

墨付け・王者の術  

我々がつくる木造建築は、仕口や継ぎ手の加工に”手刻み”を推奨しています、でも、手刻みが、大工の伝統的な技だから残したいと云ういう情緒的な感情論や、建築を造る過程の差別化を目論んで”手刻みを”推奨しているのではありません。

 大工の手刻みは、当然ですが材木に付けられた”墨(印や記号)”を目印にして刻んでいきますが、その”墨”は単なる目印で、たかが”墨”と思わないでほしい。

 なぜなら墨付けは大工(おおたくみ)の術だからだ。
墨付け・王者の術  

日本の木造建築は、材料に墨付けして、それを刻み、組み立てる、ユークリッド幾何学を生み出したギリシャの精神をみれば明らかのように、この一連の行為は幾何学的思考が必要です。

 さらに、「あらかじめ木材を刻んでおいて、組み立てる。」という方法は、幾何学的アプローチの他に、かなり高度な構想力が要求さる。
墨付け・王者の術  

王者の術
 実際、”プラトンやアリストテレスは、建築(アーキテクト)を王者の術と呼び、あらゆる技術の上位にあるものとした。”と云われています。
 
 「だから”墨付け”は、単にノコギリで伐ったり、鑿で削ったりする個々の単純な作業とは質的に異なっている。
 それは一つの構想にもとづいて、個々の作業を組み込んでいく大工(おおたくみ)の技であり、アリストテレスの云う棟梁としての術である。…」
              木の文明の成立(上) 川添登  日本放送出版協会 
    
 日本書紀の雄略朝に闘鶏御田や猪名部真根という大工(おおたくみ)が登場する、彼らは民衆からその超人的な術を賞賛され、大王雄略はそれに嫉妬し殺害を企てたとある。

 "墨付け"は、王者の術を体現する術なのだ。



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